<4・ごめんなさい>

1/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ

<4・ごめんなさい>

 この世界の住人達は、様々なエリアに散らばって、好きなところで生活している。  僕やふわりみたいな人間に近い見た目の者は、比較的村や町といった建物がある場所が暮らしやすい。逆に、動物の姿をしている者ならば山や川、海といった環境を好む。中には猫にしか見えない見た目なのに村にいたがる者や、ワニやライオンなのに人間のような生活をしたがる者もいるので、結局はその個人の考え方次第だ。というのも、同じワニに見えても、ほとんど知性がないワニもいるかと思えば、実際見た目がワニなだけで知能は人間と全く同じ、喋ることもできるなんて者もいるからである。  元の前世に、そのあたりは大きく依存している。元動物であっても喋ることができる者もいるが、この世界に来てすぐ流暢に喋ることが出来る者は、元人間か人間のすぐ傍で生活していた者が多いのだそうだ。現世も前世もゴリラだったけど喋ることができる、という青果店のおじさんゴリラは、元は動物園の出身だったというから納得の行く話である。  それはさておき。  僕が最初に見た滝壺周辺のエリアは、人間的な生活よりも、自然の中で暮らしたいメンバーが多く集まる場所だった。元人間であっても人間に嫌気がさして動物になりたかった者、それから人間の姿だけれど人とあまり接することなく大自然でのんびり生きたいと思った者などが挙げられる。勿論、元々動物で、これからも動物として自由に生活したいという者もだ。 「あのあたり、比較的住んでいる子の数は多くないの。だから、どうしてあんなことになっちゃったのかわからない」  ふわりは僕に、防護服と大きな袋、箒や塵取りのようなものを渡しながら言った。 「黒い風船は絶対割っちゃいけない。あのあたりには古参メンバーが多いから、みんな知ってるはずなのに」 「黒い風船が割れてしまったから、住民達がパニックになっちゃったの?」 「……ああ、そっか。ごめんね、まだリオにはちゃんと話してなかったね。とりあえず準備しながら聴いてね、この防護服を、隙間がないようにしっかり着るの」 「う、うん」  渡されたのは、テレビのニュースでちらっと見たことのあるようなオレンジ色の防護服だった。それこそ、大きな感染症とか、ガスが発生していて危ない地帯とかで着ている人を見たことがあったような気がする。顔の部分だけ透明になっていて、あとはオレンジ色ですっぽり。背中にはタンクを背負っていて、外の空気を吸わずに作業することができるようになっている仕組みらしい。どうやら、今から自分達が向かうのは、そういった危険な状態に陥っている区域であるらしかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!