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エピローグ
新築の高層マンション。そこの最上階から望む夜景は素晴らしいもんだ。その一方で、自著が本棚を飾る光景も、それに勝るとも劣らない感慨を与えてくれた。
「すげぇなぁ。欲しいもんが全部だ。何もかも手に入っちまったよ」
オレがそう呟くと、肩を撫でる手が止まった。
「デモ、無理しすぎヨ。身体こわしちゃうヨ」
「アナスタシア。君は優しいね」
オレ達の関係は、もはや客とスタッフの間柄ではない。彼女は唯一無二のパートナーであり、この世で最も大切な存在となっていた。
「新しい軟膏、効くとイイネ」
「君がケアしてくれるんだ。抜群に効果があるはずだよ」
「ありがとう。アタシ、嬉しいヨ」
再び小さな手のひらが肩を撫でた。赤く腫れあがった身体に染み込んでいくようだ。塗り薬の薬効も、アナスタシアの気遣いも。
諦めずに小説を書き続けて良かった。オレは長い長い溜息を吐き、それから胸いっぱいに希望を吸い込んだ。
ー行き過ぎた作家のドM事情 完ー
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