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ざわざわと騒がしい、カフェ店内。
その雑音を掻き消すかのように、東生がコーラに刺さったストローをクルリと回した。
カラカランッ、とグラスに氷のぶつかる涼やかな音がし、心地良く耳に響く。
「悪ぃな。急に呼び出して」
「……、別に」
ぼそりと呟き改めて周りを見渡せば、客層は女性ばかり。
それもその筈。女性受けする洒落た内装と雰囲気。そして可愛らしいメニューの数々。
目の前にいる東生──白金の短髪にピアス、黒のレザージャケット姿の厳つい男が選んだ店とは、とても思えない。
「お前さぁ、まだ燻ってんの?」
東生が少しニヤついた顔のまま、軽口を叩く。
「就活はどうしたよ。……愛咲が心配してたぞ」
そう言われて気付く。
──ああ、そっか。さっきまでここに、愛咲がいたのか。
妙に納得しながらキャップのツバを下げ、腕を組んで俯く。
「そろそろ安心させてやれよ。……お前ら、付き合ってんだろ?」
「……」
付き合ってる……訳ないじゃん。
愛咲が勝手に、僕につきまとってるだけ。
「……まぁ、いいや。
これ、この前の……人前式の写真な」
焼き増ししたんだろうカラー写真が、剥き出しのまま投げ寄越され、テーブルの上を僅かに滑る。
ツバの先から覗き見れば、それは遠目でもわかる……樹と真奈美のツーショット。
幸せそうな笑顔の二人。
「お前も来れたら良かったのにな。真奈美ん、チョー綺麗だったぞ。
つーかさ。安定期入っても、まだ悪阻続いてるんだってよ。
──大変だよな、妊婦って」
「……」
それでも──樹の子を孕めたんだから、いいじゃないか。
唇をキュッと引き結び、写真から視線を外す。
……ああもう。
さっきから心の中で毒づいてる僕は……本当、最低。
でもまさか、東生。この写真を渡す為だけに、わざわざ呼び出したんじゃないよね。
キャップのツバを下げたまま、少しだけ顔を上げる。
僕は、コイツが嫌いだ。
東生があの時、余計な言動をしなければ。……多分、樹は僕から離れたりはしなかった筈だから。
少なくとも、拗れたりなんか……しなかった──
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