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翌朝登校すると、先に来ていたキョージンが教室に入るおれを見るなり、待ってましたとばかりに席を立った。
うれしそうにおれのあとを追って席まで来る。
「で、で! 昨日あれからどーだった!?」
期待いっぱいの眼差しが、背中からでもわかるくらい突き刺さってくる。
横目で殺意いっぱいの眼差しを返すが、さすが狂人、あえて空気を読まないからおれが諦めるしかなかった。
「当然だけど、かからなかったよ」
淡々とそう伝えると、キョージンはあからさまに落胆の色を浮かべた
昨日、桑田エンジェルという派手なおじさんに事務所に拉致され、最初に彼の得意とする催眠術をかけてもらうことになった。
けれど、1mmも桑田さんの指示に体は従うことはなく、固まるはずの手足は動き、わさびはめちゃくちゃ辛かった。
さすがに申し訳なくなって謝ったら、「いやー君はそうかなと思ったんだよ、全然予定の範囲内!」と桑田さんは余裕そうに笑っていたけど、じゃあなんでわさび食べさせたんだ。
「んじゃ、教えるって言ってたやつは?」
諦め切れないとばかりに喰い下がられる。
「講座は、受けた」
「実戦はしてないの?」
「事務所にいた人にかけさせてもらったけど。あの人の身内だし、やってんのかやってないのか分からん」
「お、じゃあかけるのは一応できるんだな。俺にもやってみてよ!」
つまらなさそうにしていたキョージンの目が、わかりやすく輝く。
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