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声の主を見上げると、短い前髪の下で大きな瞳をぱっちりと開いて阿南が微笑んでいた。
細い首をかしげて、長いツインテールが揺れる。
阿南日葉。
彼女もキョージンと同じく小学生からの知り合いだ。
クラスの学級委員で、誰とでも喋れるトップ・オブ・ザ・陽キャの称号を持つ彼女。健康的な長い手足を惜しげもなく見せる制服の着こなしは、まごうことなき陽キャの証拠だ。
小学生のころは一緒に遊んでいたこともあったけど、今は話しかけるのも躊躇われるカースト上位の雲の上のお方になってしまった。
……というか陽の瘴気が強くて近づくと死ぬんで、話しかけようとも思わないんだけど。
「ちがいまーすー。神ちゃんが催眠術を習得したから、かけてもらってたんだよ」
「えっ、なにそれ!? 神多くんそうなの!?」
キョージン、余計なことを……。
阿南とは10年以上の付き合いでも、苗字呼びという距離感からお察し。のはずが、気のせいか話に食いついているように見えるんだけど?
「いや……習得したわけでは……」
「すごいすっごーい!! あたしにもかかりたーい!!」
気のせいじゃない……!?
阿南は新しいおもちゃを見つけた子どものように、人の話も聞かずに容赦なく身体を寄せて来る。
ちょっと待て待て、当たってんだけど! 距離が近い!!
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