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「にっちゃん、神ちゃんそういうの苦手だからお手柔らかによ」
「え? あ、ごめーん!!」
キョージンがニヤニヤしながら助け舟を出してくれたおかげで、阿南は慌てて身体を離した。
「いやー、神多くんっていつも落ち着いてるから。あはは、ごめんねー!」
……かわいく謝られて、悪い気はしなかった。
悪いのはむしろ男兄弟で育ったためか、女子に触られるとテンパってしまう自分だ。
普段が無表情な分、わかりやすく取り乱すのが情けない。
「えー、じゃあ、かけてもらうの無理かなぁ」
がっくりと肩を落とす阿南。
そのあまりにも悲しげな姿を見ると、せっかく声をかけてもらったのにむざむざと追い返す自分がかなりの極悪人のように感じてくる。
「あ、いや……。まだ始めたばかりで、かけられるか保証はできないけど。それでもよければ……」
言い訳するように口の中でもごもごやると、阿南の顔がパッと明るくなった。
「うんうん! ポケットティッシュだよ的な話だよね、好きだよ! いいよー、やったー! さすが持つべきものは幼なじみだねっ」
すぐに隣の席を引いて腰を下ろした。
主人を待つ犬のように、うれしそうににこにこと見えない尻尾を振って待っている。
幼なじみか。やれやれ……。
「じゃあ……。まずは体の力を抜いて……」
慎重に、あまり触らないように。阿南にも予備催眠を試してみる。
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