3話・コミュ障が催眠で治るわけがない

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「眠るよ」  予備催眠をかけてから、本催眠のために圦本を眠らせる。  うまくかくんと頭が落ちて、催眠状態に入った。  ここまでは、おけ。 「……あなたは、とても喋ることが好きだ。喋りたくて喋りたくて仕方がない。今まで突っかかっていた違和感が取れ、スラスラと口から言葉が出てくる。驚くほどスムーズに話せるし、それが楽しいと思う……」  人の心をもてあそぶようなことをしているんじゃないか。  気分が重い。  非現実的な現象を検証するためとはいえ、首を突っ込みすぎていないか?  だけど、もし催眠術が本当なら——。  いつもおどおどして俯いている圦本が、楽しく話す姿を見てみたいと思った。 「……OK、3つ数えて目覚めると、あなたは喋るのが好きになる。必ずそうなる! 3、2、1……」  祈るように指を鳴らして、圦本を起こした。
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