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ベスビアナイト国が「帝政」となって、十七年の歳月が経っていた。女帝マリアには娘一人と息子一人。まだ皇太子をさだめてはいない。息子が軍に入ったから、娘が次期皇帝となるのではないか。そんなうわさが、ちまたでは流れていた。けれども未だに、想像できない。自分に皇帝など、つとまるのであろうか。母上も父上もやさしいから、ふれてこない。自分のしたいようにすればいい、と、言ってくれてはいる。謁見の間へ呼ばれたのは、ついに将来が両親たちの手によってさだめられたからであろうか。
エリス先生が開いている学び舎へ足を運ぶ。授業が始まっても、ため息をこぼすばかりで頭に内容が入ってこない。ふだんは楽しいはずの軍略すら、集中できなかった。
「どうかしましたか」
心配したのか。先生が声をかけてきた。
「すみません。実は……」
内にある不満を、こぼした。考える仕草をして先生は、「決まったわけではないでしょう」とほほえむ。
「でも将来どうしたいのか、はやく決めなくちゃいけないと思ってて」
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