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「さっそく本題に入るわ。ゼノビア、皇帝になるつもりはない?」
予想通りだ。心臓が高鳴り、体中から汗が噴き出る。
「わ、わたしでよろしいので、ございましょうか」
「ええ。あなたは政治や軍略にも、つよく興味を持っているとエリスから聞いているわ。あなたこそ、ふさわしいと思うの」
エリス先生。その助言はありがた迷惑です。と、心の中で苦言を呈してしまう。
「いま答えなくては、いけないのでしょうか」
「いいえ。ゆっくり考えてくれていいのよ。ただ提案をしただけだから」
そのあとは、どう会話をしたのか覚えていない。記憶が消えている。ただ謁見の間を出てからは、おぼつかない足取り回廊を歩いていた。膝から崩れそうになったとき。
「大丈夫ですか」
躰をささえてくれた。見上げると、エリス先生の息子オリヴァーだった。先生には息子が二人いるが、長男のほうだ。いまは軍に入っているため、ずいぶん筋肉がついている。
「ゼノビア殿下!」
アデリナがあわてて、駆け寄ってきた。心配をさせてしまった。
「案の定、次期皇帝にならないか訊かれたの」
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