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あふれんばかりの陽光がカーテンの隙間をぬって、寝台に光と温度を運んでくる。上半身を起こして、ぐっと伸びをした。着慣れた軽装に着替えると、そっと部屋から抜け出す。朝廷側にある書庫へ向かうためだ。古びた本を、胸を高鳴らせながら開くと。
「ゼノビア内親王殿下、いずこにおわす」
専属メイドの探す声がひびいてきた。あわてて奥へ身をやつしたが、見破られていたのか。即刻、見つかってしまう。
「どうして、場所がわかってしまうの」
「内親王殿下のお考えなど、朝飯前でございます。さあ、朝餉の準備が出来ておりますよ」
メイドにせかされて、しぶしぶ朝食へ向かった。椅子に座ると、母上がくすくすわらっている。
「ゼノビアはますます、わたしに似てきたわね」
父上はあきれ半分で、にがい表情をしていた。弟シリルは困り顔で、ようすを見ている。
「ゼノビア。今日は謁見の間にいらっしゃい。公式な場での、お話があるの」
「はい」
首をかしげながらも、うなづいた。
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