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「あ、光流!俺教室行く前にプリント貰いに行かなきゃ、先に行ってて」
確か今日のHRで文化祭用のアンケートを配るはず。
まだ先だけど、中学の時もこのくらいの時期だったし…テレビで世間知るまでは早いとか考えたこともなかった。
「あ、それなら俺カバン持ってくよ!教室で待ってるなー!」
「ありがと〜」
職員室にいるかな…?
俺たちの担任は生徒に人気がある。
いや、担任だけじゃないか…
「失礼します、1-Sの……う゛っ…」
なんだなんだ。
目の前に巨大な壁が…。
「悠ちゃん、悪ぃ気づかなかった」
「どういう神経してんですか…、てかなんでそんなところに突っ立って…」
「いやね?足音聞こえるし、久瀬の声も聞こえるしで」
知ってます?そういうの待ち伏せって言うんですよ。
とは言わない。
一応先生だし。
「あ、はぁ…そーなんですね〜、あの今朝のプリントを…」
「よく覚えてんねそんなの」
「いや、当たり前…です、よ」
危ない、当たり前だろって言いそうになった。
世良 尚人。
これが俺たち1年Sクラスの担任。
学園のOBでもある。
(先輩だと思いたくはないけど)
確か、次男だから家はお兄様が継いだんだよね。
やっぱり長男は優遇されるのかな。
「なーんだよ、ジロジロ見ちゃって、えっち」
「んな゛…!!?い、いや!そんなつもりは毛頭ないです!」
「嘘だよ、めっちゃキョドるじゃん」
ゲラゲラ笑われても…
そんなに面白いですかね、俺は面白いとは思いませんが…。
「プリントなら俺のお部屋にあるよ、一緒に行こっか?」
スススッと腰に手が回ってきて、耳元で呟かれる。
いや何でだよ。
今の台詞のどこに熱を含む要素が?
「あー、あの汚部屋…」
「おい、漢字変換するな聞こえてんだよ」
「いにゃい、あにすふんれすあ(痛い、何するんですか)」
「俺が付いてってやるって言ってんだろうが、喜べ」
「いや別に頼んでないです」
「…あ゛?」
「お願いします」
めっちゃ怖かった今の顔。
お怒りボルテージ上げないようにそっとしとこう。
「じゃ、行こ」
よくこんな性格でモテるよね…
俺なら絶対この人の親衛隊なんか入らない。
食われるどころか、骨の髄まで頂かれそう。
ハイエナのような…
そう考えたら耳とか似合いそう…、やめよう笑いが込み上げてきた。
「……そういえば、最近仲良くやってんの?久瀬と」
「光流ですか?まぁぼちぼちと…」
「楽しい?」
「楽しいって、楽しいに決まってるじゃないですか」
…別に嘘はついてない。
一緒にいる時は楽しいし、いない時は…
ただそれだけだ。
「クラスメイトは?最近久瀬とよく居るけど」
「あ〜、弥彦と和はなんか、波長が合うんじゃないですか、ね?」
「2人は久瀬と波長が合うんだ、じゃあ悠ちゃんは?」
「…合いますよ」
「へぇ…?」
こういう時だけ鋭いって…なんなんだよ。
とか話してるうちに例のお部屋についた。
いや学内にこんなん許されるのかとか思うけど。
別に世良先生だけじゃない。
結構色んなところに職員用の部屋があったりする。
無駄に広いし無駄にお金かけてるって感じ。
「じゃあ待ってま…っ!?」
ぐいっと腕を引かれて、俺まで中に入る羽目になった。
しかもぐらついた俺を受け止めたのも世良先生。
「おっと、大胆」
「怒りますよ、言ってくれれば中に入ります」
「冗談だって、ジョーダン!」
「……この脱ぎっぱなしの服は…」
なんで下着まで…。
俺が踏んでいたものは多分下着だろう。
なんでこんなとこに。
「それ俺の、と…これ誰のだろ」
「世良先生…、そういうのアウトなのでは?」
「向こうから誘ってきたんだよ、そんなに嫉妬しないでよー」
「しません、なんで俺が嫉妬するんですか」
「悠ちゃん怖い怖い、ほらちゅーとかはしないけど…こういうとこいると溜まるからさ?」
「…はぁ、よく分かりませんけど…」
「悠ちゃんクォーターでしょ?家でスキンシップとかしないの?外国文化であるじゃん」
「しますよ、ほっぺとか…」
「へー、じゃ俺も♪」
チュッと口にキスをお見舞された。
「いや口…は…っ」
「こういうのする?」
「えっ、?!…しな…ぁ…ふ、ん…」
いゃぁぁぁぁあ俺のファースト…
ファーストなのか知らないけど、キスが…。
とか内心叫んでる。
でもそんな驚くことじゃない、スキンシップを履き違えたバカにされた事くらいはある。
カウント的にはZERO
「ん…、ぅ…」
また唇にチュッとキスをされて、そのまま離れた。
テクニックってやつなのかな、ちょっと気持ちよかった。
「あんま驚かないんだ?」
「スキンシップを勘違いしたバカにやられたことがあって…ここまではありませんけど」
「あれ、俺その馬鹿?」
「馬鹿ですね」
「えーつまんないの、せっかく出来たのに」
「なんでそんな名残惜しそうなんですか、そんなにしたいなら親衛隊とでもしてればいいのに」
「悠ちゃんクール〜、そうじゃなくて俺は悠ちゃんとしたかったの」
「はぁ、、何故に…って時間…!」
プリントすっかり忘れてた…!!
「いいよ、次俺の授業でしょ?」
「…遅刻扱いしないでください」
「えーーどうしよっかなーー」
理由なく遅刻なんかしようモノなら俺は兄さんに扱かれるだろう。
すごい怖いしすごい痛い。
「あ、良いこと思いついた悠ちゃん首貸して」
あ、なんか悪巧みしてたな?
怪しすぎる
「首…?何するんですか」
「面白いこと」
なんて強引な。
首貸すって取り立てみたいな言い方だし。
はい。と髪退かして首を見せる。
こんなんでいいのか、?
身体を売るみたいな感じ、?
「じゃあ失礼して」
「いっ…!?ぅ゛、あ…」
ピリッとした痛みが走った。
え、え?何事???
抓られたとかじゃないよ、ね?
吸われた???
「痛いです…」
「匂わせ、ちょっと濃くしちゃった」
「濃く??」
「付けられたことない?キスマ」
「!?!なんてもん付けてんですか!!!!」
「ホイホイ差し出す方が悪くね〜?あー俺久瀬に叱られる」
「光流?まぁ確かに同室者がそんなもん付けてたらそうなりますけど」
「…マジで言ってる?」
「なんか変なこと言ってます?」
「いや、なんでもないよ〜久瀬たち大変だなって」
「…そ、それよりこれ髪かけたら見えないですよね?」
変な誤解を招くなんて真っ平御免だ。
「んー、ちょっと見える…あ、でもそんな腫れてないから蚊に刺されたのかな?ぐらい」
「良かった、じゃなくて!こういうのしたらダメですからね…?!ほんとに…」
言い終わった瞬間、机の上にあったプリント抱えて一目散に逃げた。
捨て台詞みたいになってたな…。
蚊に刺されたと思って忘れよう…、何も無かった!!よし。
でかい蚊。
光流にお礼も言わないと…。
開けっ放しの部屋で、先生が何を思ってるのかは知らないまま―――。
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