アウトライン

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「あー!遅いぞ悠!」 「ご、ごめんごめん…」 「なになに?なんでそんなに疲れてるのー?」 「わ、弥彦…おはよう」 「おはよ悠くん〜!えへ、今日僕いい匂いするでしょ?」 「うん、いつもいい香りだけど…今日はラベンダーの香りがするね」 「でしょ〜!ボディオイルなんだ〜!悠くん今日僕の部屋来てよー、塗ってあげる!」 「えぇっ…俺に合うかな?」 「合う合う!悠くんとお揃い〜だめ?」 「ダメじゃないよ、じゃあお邪魔するね」 そう言ったら座ってた光流も反応した。 「俺もそれ塗りたい…!!!」 光流ってオイルとか好きだったんだ…。 「光流も来る?」 誘ったら弥彦が腕を離して光流に駆け寄って行った…。 「ダメに決まってんだろ、なーにしゃしゃり出てきてんだウジ虫」 あ、何言ってるか聞こえない…… こそこそ話って目の前でされるとちょっと傷つく。 何話してるのか分からないし…。 「ァ、キョウハ…用事アッタナ…」 「そうだっけ??大変だね光流も」 「悠くん大好き〜!絶対だからね?」 俺に抱きついてきたのが (はなぶさ) 弥彦(やひこ)。 俺と身長あんま変わらないけど、力は強い。 家の事情もあってか、気軽に話しかけに来るやつは少ないのだとか。 「あ、あのさやっちゃん、悠がプリント落としそうだぞ」 「なーに?僕が悪いの?じゃあ光流が悠くんの持てばいいじゃん」 「あ、いいよいいよごめんね弥彦…」 そういえば弥彦って名前呼びしないのかな? 皆やっちゃん呼びだけど…。 どうせなら本人に聞いてみようか。 「あれ、そういえば和は?」 「和は生徒会だって、ほら朝会議って言ったろ?」 「あ、忘れてた…そっか書記だもんね」 「今日の日直出れなくてごめんって謝っておいてほしいって言われたよー」 伊都(いと) 和臣(かずおみ)は、1年生ながら生徒会書記を務める。 中等部でも色々活躍してたらしいけど…、俺は中等部の頃海外にいたからあまり知らない。 弥彦とは長い付き合いなのだとか。 「あれ、悠…」 ふっ…と頬に手が触れる。 「ん…?なに、?」 「………首どうした、朝はなかっただろ」 「あー、いや、蚊に食われちゃったみたいでさ…痒くて〜」 そういえばすっかり忘れてた…。 世良先生も来ないし…!!! でも蚊に刺された程度って言うし…言い訳も思いつかないし。 「え〜?光流邪魔、僕にも見せて?大丈…ぶ…」 「え、な、なに?」 「…なにこれ?」 ひぇ、怖…!!!? え、なになに首そんなに腫れてた…? 「朝はなかったんだけどな〜、プリント取りに行った時?」 「誰だろうねぇ…」 「誰って…、人じゃないんだから…蚊ぐらいなんてことないよ、痛くもないし」 「蚊に刺されたら痛くはないよね?言うとしたら痒くない、とかじゃないの?」 弥彦のツッコミに心臓が止まるかと思った。 そういえば確かに言わない、かもしれない…! 「センセもそろそろ来るし話聞こうか」 「悠、俺はこれフォローしきれないからな」 「こーーんなキスマーク付けてるんだもんね!」 「ちょ、バカ!おっきい声ださないで…!!」 弥彦の声に教室中がシン…と静かになる。 そりゃそうだ、こんなところで叫ばれたらそうもなるだろう。 止めてくれ…。 (ガラッ) 「お、?遅刻しといてなんだが、やけに静かだな?」 「世良センセ〜、悠くんの首に跡がついてて…痛そうなんですけど?」 「なんだ悠ちゃん、隠さなくて良かったのか?」 げっ、言いやがった…! いやおかしいでしょ!! 黙っててよ…! 「いや、これは…間違ったっていうか」 「蚊に食われたなんて嘘つくのおかしいよなー」 「そうそう、そこは光流に同意しちゃうよ僕」 「世良先生…!事故だって言ってください!」 「なーんだ、お前らまだ手出してなかったんか!!じゃあ俺が初めてってわけだ?そりゃご馳走さん」 ニコッとイケメンが笑う。 いや、腐ったイケメンが。 「…ちょっと借りていきますコレ」 「あ!僕もーーっ!!」 掴まれる腕。 と、付いてけない俺。 「えっ!?なんで俺…!?」 「は?!ちょ、お前ら授業…」 「世良先生、ライバルだったとは…負けねぇ」 「暗黙のルールを破った先生が悪いからね!!僕も絶対渡さないから」 教室中の視線を集める俺。 痛い。 次第にコソコソと話し声が聞こえてきた。 ⌜狙ってたのに⌟ ⌜勝てっこない…⌟ ⌜応援する⌟ 何だこの会話は… 「あ、あの…勝負、?なら勝手にしてていいから…!俺を巻き込むなよ…!」 「悠ちゃん、俺も参加しちゃおうかな〜楽しそうだから」 「何の話ですか…、っうわ!」 いきなり光流に抱き上げられて 今日何度目かの声を上げた。 「宣戦布告ですからね!俺たち敵に回すと怖いッスよ?」 「おーっと、こっちだって1人なわけじゃないからそのつもりで」 「今日の授業は俺らサボりなんで、じゃ!」 と言って教室から俺を抱えて走り去る光流。 と、ちゃっかり付いてくる弥彦。 …And 意味わからん俺 え、何?なんの会話??なんで修羅場みたいになって… なんで!? 俺兄さんに怒られる…!! 「終わった…」 「悠くん、ダメだよそんな隙見せちゃ!!そんなんだからキスマークなんて付けられちゃうんだよ?」 「いやあれは…ってか速い速い…!目が回る…っ」 「やっちゃん風紀委員だろ、ちゃんと伝えておけよ」 「言われなくてもメッセ送信してあるって」 「風紀?!え、そんなに大事じゃないって…俺大丈夫だよ、?!」 「俺らが大丈夫じゃないから!」 「あ、呼ばれちゃった…!!」 弥彦がスピードを落とす。 てかなんで走ってんの? 「変なことしたらタダじゃ済まないから!僕ちょっと行ってくるね悠くん…!」 「え?!あ、えと、うん…?」 なに?いや俺が言える立場じゃないけどキスマ如きでこんな騒ぎになるの?? 先生が生徒に手を出したから、? あの人いつも食ってますけど…。 え?ほんとに何が起こってるの…!? 「み、光流…どこ向かって…」 「俺らの部屋」 「は、?!学校は!?」 「今日は諦めな、居てもいいけど大変だと思うし」 「どういうこと?ちょ、もう自分で歩ける…!」 「いいから、俺の方が足速いし…悠の保護」 保護、? …天然記念物とかのアレ? やばい目が回って思考が…。 頭クラクラしてきた…。 学校…欠席…兄さん…。 俺何も悪くないのに なんでこんな…? 暫くして本当に寮に戻ってきてしまった。 ドサッとソファに下ろされる。 リビングに居てこんなに疲れたの初めて…。 「…う、疲れた…」 「カードキー落としてないか?入ってこられたら困るし」 「え、あ、うん…大丈夫」 「で、なんでキスマなんか付けてんの?」 「いや、あの…そんなに怒ること、?先生が生徒にって言うなら…俺別にそんな気にしてないし…寧ろちゃんと了承?とかあるし」 「合意ってこと?」 「似た感じ、?」 本当は遅刻扱いしないでもらいたかったからってのが理由だけど。 いやもう寧ろこれで欠席になるなら遅刻の方がまだマシ…。 本末転倒だろ…!! 「俺、さ胡座かいてて…もしものこと考えてなかったよ」 「え、なに、?」 「それ消してやろうか、その跡」 「そんなことできるの?」 それは是非ともそうしてもらいたい。 こんなのがあるからこんなことに…。 「…ちょっと貸して」 「え」 (ヂュッ) 「え、あ、え!?ちょ…み、光流!!」 それじゃ広がる!! 広がるって言うのかな酷くなる、? 「何も跡を見えなくするって言ったわけじゃないだろ、上書きってやつ」 「は、はぁ!?」 「他にどこ付けられてんの?」 「いや、え、く、首だけ…だよ」 「えー、怪しいなー見して」 いやいやいやいや待ってよ。 何この空気!! 光流の整った顔が俺に近づいて…影を落とす。 「いいか?先生は暗黙のルールを破ったんだよ。ってことは、悠はこれから色んな人に狙われるんだぞ」 「いや、何で俺、?てか暗黙のルールって何…」 「悠に手を出さないってルール」 「いや俺別に手は出されてないし!」 「キスマは十分出されてるけどな」 「う、…あれはほんとに…スキンシップとか先生勘違いしてただけで…延長線というか…」 「スキンシップ?」 「あ。いやあの」 黙れ俺の口…!! と、言えるはずもなく。 「言ってみ?」 なんなんだ、いつも俺を独りにしてるくせに…。 俺には分からない話ばかりだ。 ついていけないのは今にはじまったことじゃないのに。 心の中でそう思いながらも俺は… 経緯を洗いざらい吐かされた。
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