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嫌な予感
光流と和、生徒会の方々の視線が痛い。
「ば、っ…悠…!服着ろ!」
「ご、ごめん…!!」
「おい、悠…この俺を無視するとは…いい度胸してるじゃねぇか」
「え、?」
ふ、と自分の前に立った人間を見る。
生徒会会長、志築 晶先輩と生徒会副会長、巫堂 眞先輩だった。
「悠、おい聞こえてんだろ?俺が直々に逢いに来てやったんだ、喜べ」
「お、おれ…は…別に…」
「ほー、ちゃんと男らしくなったんだなァ?」
「志築様には…関係ない、です…」
「晶、それは脅しですよ…何のために逃げ回るネズミを捕まえたと思ってるんですか?ねぇ悠?どれだけ逃げ回れば気が済むんですか?」
「悠、ネズミじゃない…」
「和臣、少し静かにしてください」
俺は、俺は別に会いたく無かったのに。
「志築様…って、おい志築!俺に言ってた事、嘘偽りないって言わなかったか?」
「ァ゛?ねぇよそんなん、あるとすれば…こいつは生徒会補佐でありながら俺たちからしっぽを巻いて逃げたってことだなァ」
クククと笑うその顔は変わらない。
「は、?生徒会補佐…?」
「…俺は…もう生徒会補佐じゃない…」
「まだ根に持ってんのかよ、言っただろ?あれは愛情の裏返しだって」
「悠…俺…気づけなくて…、でも戻って来て欲しいって…思ってたから…」
だから止めなかったのか…。
「ちょ、ちょっと待てよ…俺全く話についていけないんだけど、志築が悠を好きなのは……!過去に悠を可愛がってて…離したくないって思ったからだろ…?今は疎遠だけど、仲直りしたいって言うから俺は…!!」
「嘘はついてないだろ?沢山可愛がって、疎遠になった今、また近づきたいって心から思ってることには変わりない」
「私も光流君に言ったこと、嘘ではありませんよ?それはもう大切にしてきたのに…ある日突然いなくなって私たちを避けるようになった、そうですよね、悠」
「俺、悠の事本気で好きだから…次は守る…こんなバカ共に…渡さないから…お願い…戻って来て欲しいっ…」
和がぼろぼろと涙を流す。
「光流に、なんて言ったのか知らないけど…あれは愛情なんかじゃない…っ…俺は…」
そこまで言って言葉に詰まる。
俺は、どうなりたかったんだろう
自由になりたかった、誰も俺に目を向けることない日々が欲しいと思った。
でも今の俺は…
「俺は、なんだよ?」
「楽しい学園ライフはどうでしたか?外を知らない小鳥は外を知って何を学んだんでしょうね?」
「…っ、俺…は…」
「悠…っ!俺は今の悠しか知らない…、でも俺は…どんな悠でも好きだ…!」
光流の声が響く。
どんな俺…僕…でも?
「それは凄い、どんな悠でも好きになってくれるんですね!とても素敵なお友達ですね悠」
「久瀬は知らないだろうから教えてやるよ特別にな」
「や、やめ…っ!!」
言いかけたところで巫堂先輩に口を塞がれた。
「んぐっ…」
「悠、お前の嘘偽りない姿を光流君に知ってもらういい機会ですよ?」
「こいつは俺らの所有物だったんだよ。こいつの兄貴と和臣が余計なことしなけりゃ今も、エロくて気持ちいいこと大好きな猫ちゃんだったもんなァ?」
「な、…それって…」
終わった。
俺はまた…この人たちの玩具になるんだろう。
あんなに必死に逃げたのに。
光流を呼び出して…俺の周りから人を遠ざけたのも思えば生徒会だ。
それに風紀委員長が悪ノリでもしたんだろう。
「お、おい和…お前も悠が好きなら…なんでそっちに居るんだよ…?!」
「……」
「なんだよ和臣、お前光流に猫かぶってんのか?お前は悠の犬だろ」
「…俺だって…好きでこんなことしてる訳じゃない…」
「久瀬、お前の愛が本物かどうかなんて俺らにとっちゃどうでもいい事だ。事実は伝えた、これでフェアだろ?」
「悠、もう外は辛いでしょう?私たちがしっかり管理してあげます…好きなだけ、欲しいだけ甘やかしてあげますから……、だから戻ってきて下さい…悠…」
背中に顔を埋められる。
震えてる…、でもこの震えは…喜びから来る震えともとれる。
俺は、どうしたらいいんだろう…
今まで隠して来れたから光流と弥彦と和と…いられたのに。
和と弥彦は俺の監視要因だろうが…少なくとも4人でいるあの時間は特別だったのに。
「そのちっぽけな脳で考えてみるんだな。お前の恋心ってやつがどんなものか」
光流は、まだ俯いてる。
……俺は、もうここにはいられない。
学園を出たい、出られるはずもないと分かっているけど…。
もうあの生活に戻るのは嫌なのに
「和臣、お前そいつのこと見てろ、それくらいは出来んだろ?俺は今日悠と久しぶりにじっっくり話をする必要があるからな」
「弥彦もそろそろ来るだろ。鉢合わせるとめんどくせぇ、眞、貸せ」
「っ…た…」
ぐいっと片手で軽々と持ち上げられる。
俺は、無力だ。
泳ぎ方を知らない魚は
格好の獲物。
逃げる場所がない俺は正しくそれだろう。
「手間かけさせやがって」
抵抗もできなくて、ただただ担がれるしかない。
「悠、一人称もちゃんと可愛く直しましょう、また、ね?」
するっと頬に先輩の綺麗な指が触れる。
これから何が待ち受けてるかなんて嫌という程分かってるのに、なんで俺は抵抗しないんだろう。
光流は、どう思っただろう…。
普通の友達なんて、やっぱり無理なのだろうか…。
「おや、?悠…この首の痣、どうしたんですか?」
「っ…これは…蚊が…」
「蚊ねぇ、世良の野郎はいつから蚊呼ばわりされ始めたんだ?」
「知って…っ」
なんでわざわざ知ってるのに…!
こういうところが性格悪いんだ。こういうところ意外も。
「…あれ、悠…これ尚人先生だけじゃないですよね?」
「ア゛?」
バレた。巫堂先輩は…鋭い。
「おい、答えろ聞かれてんだろ」
「…これは、その…み、光流が…」
「アイツ早々に手ぇ出しやがって…!チッ!クソが」
「ちゃんと消毒しないといけませんね」
綺麗な顔が近づいてきて首にリップキスをされた。
「……」
何もかも壊れればいいのに
こんなの普通じゃない。
狂ってる――――――
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