嫌な予感

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いつの間にか 重厚な生徒会室の扉をくぐっていた。 迷うことなく奥にある休憩室に向かう先輩の足取りは心做(こころな)しか軽い。 ……戻ってきてしまった…。 (ガチャッ)と扉が開く。 「…さて、じゃあ着替えないとね」 ポイッと無駄に柔らかいベッドに投げられた俺は、次に何を言われるか分かってる。 「さっさと脱げよ、今更恥ずかしがる必要もないだろ?」 「…やだ…」 「…なんだって?」 「もう嫌だ……、やだ…あ、あんなの…」 「…はぁ、お前、先に調教してやろうか?俺は今日機嫌がいいんだよ、こうして冒険も終わったんだ…素直に言うことだけ聞いてろ」 「ほら、いやいや言わないで…ちゃんと首輪も新しく新調したんです、スイッチを押したら締まるんですよ」 こんなの付けられたら、もう逃げられない。 「…やだ、離し…て!離せ…っ嫌…!」 自然と目から涙が零れる。 俺は人間以下になろうとしてる、そんなのもうウンザリだ… 「気が変わった、やっぱいいなお前は泣いてる方が可愛い…眞、お前抑えてろ」 「な、っ…やめて…光流…っ!和、!!…弥彦…っ」 叫んだって誰も助けてくれない。 この部屋は、俺用に作られてるんだから…。 逃げられない、俺の城だった。 「よいしょっと、はい、シーっ…久しぶりですし、悠も痛い思いしたくないでしょう…?」 腕を固定されて、腰の上に志築先輩が乗ってくる。 あ、もうダメだ… 「そう、いい子…力を抜いて…」 優しい声が上から聞こえる。 ――――優しく、酷く甘やかされる。 逃げられないように、逃げる術を忘れさせるように。 痛みと、苦しみと、快感が交わる中で何度も願ったのに。 俺の自由は作り物に過ぎない。 結局は手のひらで転がされただけだ。 どうしてこうなったんだろう…。 俺が、生徒会長に憧れたから…。 こんな人だって、見抜けていれば 生徒会補佐なんかに立候補して、近づいたのが最初にして最大の過ちだった。 サメの群れに飛び込んだ獲物は 骨の髄まで食い尽くされる。 先生がハイエナならこの人たちは獰猛(どうもう)なサメだろう。 俺は 空を知らない魚に過ぎない。 青い天井にただ恋焦がれる 弱い人間だ。 分かってる 兄さんだって、遊び半分で逃がしたんだ。 そういう運命だった。 そう思えば納得もできたのかな 望んでもないのに スルスルと服を脱がされて、上着で手首を固定されて 男同士とかそういうのが嫌なんじゃない。 気持ちいいだけの行為は 怖い。 光流が、いまどうしてるのか… 和や弥彦は何してるのか… 余計なことばかり考える。 俺、なんでこんなことしてるんだろう… 無性に泣きたくなった。
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