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「…あれからもう三年なんですね。」
相川秀哉は気付かれないように、正座で痺れた足を崩しながら言った。
「そうですねえ。秀哉君も千乃さんも毎年お参りに来てくれてありがとうね。」
「いえいえ!私達はほんとに毎年来たいと思って来ているので、お礼なんて大丈夫ですよ!」
中年の女性の言葉に秀哉の幼馴染みの西村千乃は大袈裟に返した。
…秀哉と千乃の高校時代の親友佐々木真道はちょうど三年前の4月1日交通事故で死んだ。
乗用車とトラックの正面衝突。
秀哉が友人からそれを聞いた時は身体の震えが止まらなかった。身体が真道の死を受け入れられなかったのだ。
当時秀哉は19歳。「死」について向き合うには余りにも彼は若過ぎたのだ。
…しかしそれは現実だったのだ。
「ねえ秀哉君、マサくん戻って来ないかな…。会いたいよ…。」
帰りの車の中で千乃は言った。
三年前に真道が死んだ時、秀哉も毎日そう願ったものである。
しかしもう真道は戻って来ない。それが「死」なのである…。
秀哉は月日の流れと共にそれを受け入れていた。
きっと真道も親友がいつまでも前に進めないのは辛いに違いないという確信があった。
真道の分まで一瞬一瞬を大切に生きる。それが今自分ができることと秀哉は思っていた…。
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