あなたの愛したエンドロール

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 母の生きがいは七年前までは病弱な娘であるところの夏雨の世話で、彼女が死んでからはスマホのパズルゲームだ。たぶん、ちょっと言えない量の課金もしているようで、一度父と言い争いをしているのを見た。このところ父はこの家にはよりついていない。 「……まぁ、勝手にすれば」 「行ってきます」  母はまた手元のスマホに視線を戻して、指先を素早くクルクル回した。  面接場所に指定されたのは貸し会議室だった。  指定された時間に訪れると、驚いたことにそこにいたのは女性が一人きり。  葛城陽菜だった。  鋭く切りそろえられた黒髪、真っ赤なリップ、こってりとしたアイライン。動画サイトや雑誌で時折見かける『新進気鋭の美人映像アーティスト』そのものの姿で、安っぽいパイプ椅子に座っていた。  机の上には事前に提出した履歴書やエントリーシートが広げられているようで、葛城はじっとそれを見ている。私の方を見ようともしない。 「はじめまして、四条と申します」 「あぁ。よろしく。どうぞ座って」 「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」  バイト先の店長に言われて、急ごしらえで覚えた就職面接の通り一遍のセリフが役に立った。 「……志望動機とか聞いた方がいいのかな」 「はぁ」  聞いた方がいいのかな、ってこっちに聞かれても困る。  見た目よりもずっとすっとぼけた言動に拍子抜けをした。 「えーっと、志望動機は?」
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