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葛城が持っているはずの――いや、葛城が隠しているはずの、私の大好きなお姉ちゃんの遺した真実。
私は、大きく息を吸う。
「それに、あなたが――四条夏雨を殺したことも、私は知らないですよ?」
葛城が、びしりと固まった。
「…………は?」
しらばっくれるな。
夏雨はあの日、撮影に行くと言って出て行った。
それなのに、彼女の遺品の中にはなかったのだ――その晩に撮影していたはずの映像が。あの日の夜に撮影された映像データは、彼女の遺品の中に一つも残っていなかった。
なぜか。誰かが持ち出したのだ――おそらくそこに、不都合な真実が映っているから。
「……知らないふりをしてあげる、って言ってるんですよ。夏雨はあんたとの作品作りに没頭していた……あの日、撮影に行ったのも、きっとあんたと一緒だったんですよ。違いますか? そして、あんたが盗んだに決まってる。あの日、夏雨が最期に撮影していた映像をね」
「なに言ってるの? ……そんなこと、あるわけがないじゃないか」
「じゃあ、探してもいいってことですかね。やましいことがないんでしょ」
「はぁ?」
「はっきり言ってやりますよ。私があなたに近づいたのは夏雨の遺作を――お姉ちゃんがあの夜に撮った映像を探すためなんだから!」
四条夏雨が、あんなにも映画を愛して死んだのなら、最期の晩に撮っていた映像は『遺作』と呼んでしかるべきだろう。
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