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「いや、室温でいい感じに解凍されてたから」
「よく腸炎で済みましたね」
なるほど、生活力がない。
ないどころか、マイナス。
夏雨の作品を盗んで、世間では「いい女」みたいな扱いをうけている嫌な女だと思っていたが――少なくとも、後半は撤回だ。
いい女はベッドの上にカップ焼きそばを放置していたりしない。
「なんというか、世間様ではミステリアスな才女って顔しておいてこの部屋はないですね」
「……笑わないでよ」
「笑ってません」
「なんなの…雇用主のことを人殺し呼ばわりをしておいて、平気な顔で笑うとか」
「仕事はきちんとします。けれど、私とあなたはいわば敵同士。あなたは夏雨を殺した。わたしは、夏雨の遺品を探している。そうでしょう?」
「だから、殺すわけないでしょう。私が、あの子を」
「口では何とでも言えます」
葛城は何も答えなかった。
空のペットボトルと書籍が散乱したベッドサイドに、伏せられた写真立てがあった。
「写真?」
「……ええ、そう」
「もしや、夏雨の?」
「そう。可愛い人だったよね」
「可愛い? 美しいの間違いでは?」
伏せられていた写真立てを立てる。
大学のキャンパスにたたずむ四条夏雨の写真だった。
(……? う、うわあーー!!)
私は衝撃を受けていた。
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