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0.
満天の星空のもとで、彼女は微笑みを浮かべる。
神様みたいな彼女の声は、私の鼓膜を震わせる。
「ねぇ。私はね、あなたのことを愛してる」
墨を流したような夜空。散らばる星の光。山の木々のざわめき。
まるで、映画のラストシーンのような――
「私はこの世界を愛してる。私がいなくなってからも続く、この世界を――」
夜空を見上げる。
濃紺の夜空に散らばる白い星々。
真っ暗の宇宙に無数に煌めく、名前も知らない星、星、星。
まるで映画のエンドロールのようだった。
これは現実と幻のあわいのような――思い出してはいけない、美しい光景。
1.
世界でも滅びそうな快晴で、日曜日だった。
何から何まで人工的な郊外の街の駅ビルで、やたらデカい窓のあるしゃらくさい店で新入社員懇談ランチという名の会合は行われていた。私、四条冬花は、澄み渡る青空に核ミサイルでも飛んでいないか探しながら、ロケットみたいなヤングコーンをかじる。春、うらら。
「四条さんは、ご兄弟はいらっしゃるんですか?」
同期入社の男から唐突にふられた話題。
「ええ、いますよ」
即答する。空に核ミサイルは飛んでいない。
「姉が、ひとり」
「へぇ、お姉さん」
「入社試験のときにも話題にしたのですが、一番尊敬している人物です」
「へー、すごい。立派な方なんですね」
「はい」
深く頷く。
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