あなたの愛したエンドロール

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「姉は小さいころから心臓が弱くて、病室で映画を観ることだけが楽しみだったような人だったんですが、そんな身の上に腐ることのない人なんですよ。頭もいいんです。勉強もして、高校にほとんど通わずに、独学で大学に進んで……私も、姉と同じ大学に入りたくて受験を頑張ったようなもので!」 「へぇ。独学で宝永に!」  姉の通っていた宝永義塾大学は、都会の私大のなかでは名前が通っている。  大学名を言えば、「賢いね」とか「頑張ったね」とか、ときおり「お金持ちなんだ」とかいう反応が返ってくる。そんな反応よりも、私にとっては姉と同じ大学に通ったという事実の方が誇らしいのだけれど。 「ええ、頭もよくて、顔もよくて! どんな服着ても似合うような人です。お洒落で。身内の贔屓目抜きで、すっごく綺麗だと思っています」 「へえ!」 「あーでも、可愛いというよりも美人系ですかね、どっちかというと。それで、夏雨(なつめ)……じゃなかった、姉は、大好きな映画についてはすごく詳しくて、自分でも自主製作映画とか作っておりまして」 「多才なんだ」 「ええ、そうなんです! といっても、映画大好きってかんじですかね。何やっても一通りできる器用な人ですけど。それでいて、姉の中には一種の『哲学』みたいなものがすぅっと通っていて。とにかく、姉は本当に素敵な人です!」  同期の男は、身を乗り出した。
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