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「物騒すぎる……」
「そっちがめちゃくちゃにしたんでしょう、私たちの人生を」
「……ひとつ、質問してもいいかな」
「ご勝手に」
「私と夏雨の関係について、どこまで知ってるの?」
素直に知りたかった。葛城が夏雨の元恋人であったこと、最期の年に一緒に映画を作成していたことはどうやら知っているようだけれど。
「あなたは四条夏雨をたぶらかした悪人。人生で初めて自由を手にした大学生の夏雨は、かわいそうにあなたに振り回されて、真夜中の撮影中に死にました。短編映像も横取りされて、動画サイトにあなたの名前でアップされて、さらには最期に撮影していた映像まで奪われたに違いないです、ばーかばーか。以上」
「えぇ……ばーかばーかの部分いらないでしょ」
「いまの話の肝なのですが」
「嘘でしょ!?」
軽口の応酬。少し楽しくて、もっと話をしていたい気持ちをぐっと抑える。
四条冬花。
夏雨にそっくりの表情に、長い髪。声。
まるで、夏雨が生きているかのようだ。
でも――四条夏雨はもういない。生きていない。
天才は、死んだのだ。
だから私は、この命が尽きるまで映画を作り続けなくちゃいけない。
作業を。才能の差を埋めて、埋めて、埋めてくれる、圧倒的な量の作業をしなくては。
「どうぞ」
「どうも」
作業前に、食後のほうじ茶をいれてもらった。
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