あなたの愛したエンドロール

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 今時、正社員様だからといって安心や安全が保障されるわけでもないのに。けれど、世の中というのはそういうものなのだ。おじさんやおばさんの「当たり前」が、世の中の常識を作っている。私たちは、当たり前ではない当たり前を追いかけて、人生を使いつぶしていく。  ちなみに私は、就職活動に時間をかけたくなくて、早々に居酒屋の正社員登用に応募した。勤務態度良好という店長からの推薦で、難なく内定を得たわけだ。  なりたいものがないから、就職した。  高槻とは、正反対だ。  慣れないスーツでぎこちなく歩く高槻は、肩をすくめる。 「初手から亡くなったお姉さんトークはねぇって」 「なんで。家族の話題って鉄板じゃん。人となりとバックグラウンド丸わかり」 「いや、だからそうじゃなくってさ」 「よくわかんないな」  生きている家族の話はよくて、死んだ姉の話はタブー。  なんだそれ、と私は思う。夏雨は、死んでいたって、こんなに素敵な姉なのに。  右手の薬指にはめた指輪を撫でる。  夜空色の、小さな石が光るリング。夏雨の遺品だ。  四条夏雨は、七年前の夏に死んだ。  二十二才で、美しかった。大好きなお姉ちゃんだった。  もともと先天的に心臓を患っていて、幼い頃から入院と退院を繰り返していた。
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