あなたの愛したエンドロール

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 心臓の病を乗り越えて、その賢い頭脳でもってハンディキャップをものともせずに大学に進学して、映画サークルの門を叩いた。幼い頃から病室のベッドの上、DVDプレイヤーの小さな画面でずっとずっと観続けた映画を、大好きな映画を撮るのだと、意気込んでいた。  きらきらしていた。いい匂いがした。  それなのに。  取るに足らない、ちっぽけな妹を置いて、夏雨は死んだ。  夏の日に、死んでしまった。  私はずっと夏雨の理解者でいたかった。夏雨みたいに――お姉ちゃんみたいに、なりたかった。 ◆◆◆  クローゼットから引っ張り出したリクルートスーツは、少し防虫剤の匂いがきつかった。  風通しのいい窓辺に干して面接当日を迎えたので、まぁどうにかなっているはずだ。  真っ黒いリクルートスーツは、タイトスカート。  右手の薬指に、夜空色の小さな石をあしらった指輪。  スーツも指輪も、ここ一番の勝負服だ。 「……なに、その格好」 「なにって、就活」 「就活って、あんた会社は?」 「転職なんて珍しいことでもないじゃん」 「それはそうだけど」  リビングでスマホをいじっていた母は、思い切り顔をしかめた。
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