秋の使者が夏を攫う

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秋の気配が忍ぶ窓辺 僕たちは時々 眼を合わせ 読書する 君の繊細なフォルムの手がページを捲る音は 枯れ葉の落ちる音に似ている ー時をこのまま止めて下さいー 君の美しい横顔は凛として 夕日の朱(あか)と蒼(あお)に染まる 髪のかかる頬は皆既日食のダイアモンドリング 向こう側の世界の太陽が 君と一緒に過ごす日々が残り少ないということを知らせる ー時をこまま止めて下さいー ーどうかこのままでー 花壇の向日葵(ひまわり)も枯れてしまった 萎んだ花びらは俯いた君の髪 幽霊のように佇む姿(シルエット) 泪(なみだ)の止まらぬ僕に 驚いた君の眸(ひとみ) ペシミスティックな秋風が 僕たちの夏を連れ去ってしまう
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