第十九章「決別か、和解か」

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どうして、口に出してしまったんだろう。自分でも、分からない。 「梅ちゃん。ゆっくりでいいから、今思ってることを話してほしい」 「は、はい」 恥ずかしいけれど、だからといって変に誤魔化してもよくないだろうし。 私は素直に、おもっていることのありのままを話すために口を開いた。 「綾人さんが疲れているように見えて…それで、思ったんです。私に何かできることはないかと。少しでも、綾人さんの力になれたらいいのにと。そう思ったら、綾人さんが私に言ってくれた言葉を思い出して…」 「うん」 「もしも綾人さんとその…け、結婚したら…私は綾人さんの側にずっといられて、助けになれるかもしれないなって。そう思ったら、つい言葉に」 「そっか」 「ご、ごめんなさい急に」 「謝らないで」 綾人さんは、もう私の手をもう一度しっかりと握り直した。 「嬉しいよ、凄く」 その表情はとても嬉しそうで、また鼓動が高鳴る。 「梅ちゃんがそんな風に思ってくれて、ホントに嬉しい」 「でも私、ちゃんと返事もできていないのに」 「あれは、もういいんだ」 「っ」 瞬間、胸が軋む。すぐに綾人さんが、首を左右に振った。 「違う、そうじゃなくて。俺はあの時、とにかく梅ちゃんの力になりたかった。距離を縮めたくて、焦ってたのもあるんだと思う。それで、気付いたら結婚なんて突拍子もないセリフを口にしてた。今思うと、付き合ってもないのに失礼だよね」 「そんな…っ」 「あの気持ちは嘘じゃない。俺は、梅ちゃんと家族になりたい」 綾人さんの手が、私の頬に伸びる。そして優しく、包み込むように触れた。 「俺は、梅ちゃんのことが好きだ。これから先何があっても、俺が梅ちゃんのそばにいて守っていきたいって思ってる」 「綾人さん…」 「でも梅ちゃんにとって家族っていう存在が、いい思い出ばっかりじゃないのも分かるから。それに今は、梅ちゃんが俺の気持ちを受け入れてくれただけで十分だ」 堪らなくなって、思わず私から綾人さんの胸に飛び込んでいく。しっかりと受け入れてくれた腕の中で感じる彼の鼓動は、私のそれとリンクしそうなほどに早く感じた。 「俺を心配してくれてありがとう、梅ちゃん」 「…好きです、綾人さん」 「俺も好きだよ」 どちらからともなく、私達は再び唇を重ねた。
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