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食事が終わり、私はずっと考えていたことを綾人さんに話した。
「綾人さん」
「どうしたの?」
「伊藤さんのこと、本当にありがとうございました」
「うん?」
「興信所を使って調べたと言っていたけれど、それをするにはきっと安い金額ではないだろうし…」
「うーん、あれは俺が梅ちゃんの許可も取らずに勝手にしたことだからなぁ。話し合いで解決するならそれに越したことはないとも思ってたから、ホントなら出番はない方がよかったんだけどね」
「それであの、お願いがあって」
「お願い?」
「伊藤さんが育った施設に、行ってみたいんです。それから、彼女の実家にも」
真剣に、綾人さんの瞳を見つめた。一瞬驚いたように目を見開いて、それからすぐに表情を和らげた。
「梅ちゃんはホントに、強くなったね」
「だとすればそれは、綾人さんのおかげです」
「俺は何もしてないよ」
「そんなことありません」
「ちょっと寂しいなんて思うの、ワガママだよね」
「綾人さん」
「ごめん、変なこと言って」
思いきり、首を左右に振る。
「今の言葉が変なことなんて思わないけれど、これから言ってほしいです。変なことでも」
「え?」
「私はもう、綾人さんに気持ちを隠したりしません。だから綾人さんにも、遠慮したり我慢したりしてほしくないです」
「…ありがとう」
本当に嬉しそうに、綾人さんは笑った。
それから綾人さんは、興信所からの調査報告書を私に見せてくれた。内容は、この間伊藤さんの前で話したものとほとんど同じだ。
「前にも言ったけれど、これが決定的な証拠にはならないとは思う」
「十分です。私は、彼女がどんな人達に囲まれて育ったのか。それを、知りたくて。だからこの資料は、とても貴重です。ありがとうございます」
「できるだけ日程を調整するから、一緒に行こう。万が一何かあった時のために、栞おばさんにも話しておいた方がいいかもしれないね」
「はい、そうします」
彼女を許すのか、許さないのか。
たくさん悩んで考えたけれど、結局答えは出なかった。
だけど、知りたい。伊藤菫という人の、本当の心を。
直接聞いて、素直に教えてもらえるとは思えないから。
だったら、行動に移すしかない。
無駄かもしれないけれど、ただ伊藤さんからのアプローチをじっと待っているよりはずっとマシだ。
もうこれ以上、私の大切な人達を傷付けさせないためにも。
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