第二十一章「綾人、頑張る」

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カフェを出た後は、特に行き先を決めずに街中をブラブラと歩いた。目についた雑貨屋や服屋に入ったり、書店でパラパラと本を捲ったり。 何気ないことで笑い合って、たくさん言葉を交わした。 「そろそろ時間だね、行こうか」 「はい」 「プラネタリウムっていつぶりだろ。子供の頃家族で行ったような気もするけど、大人になってからは機会なかったからなぁ」 「私は初めてなので、とても楽しみです」 「いつか、本物の星空も一緒に見に行こうね」 「はい」 未来の約束は、とても嬉しい。 割と規模の大きい科学館、そこで上映されているプラネタリウムにやってきた私達。 並んで席に座ると、映画館のシートよりもかなり背もたれが倒れた作りになっていて少し驚く。 そうか。スクリーンが天井にあるから見やすいようにこんな風になっているのか。 大きな球体の投影機のようなものも中心にあるから、どこの場所からでも同じように観ることができそうだ。 よく考えられているなと、一人感心した。 上映時間になり、辺りが暗くなる。心地いい落ち着いたナレーションと共に、様々な星や流星群、星座がちょうど良いタイミングで映し出されていく。 眼前に広がる世界はとても魅惑的で、私は思わず見入ってしまった。 ふと、隣を見る。暗くてハッキリとは分からないけれど、綾人さんの目が閉じられているように見えた。 もしかして、寝ているのかな。 確かに映画よりもゆったりと落ち着いた雰囲気だし、思わず眠ってしまいそうになる気持ちも分かる。 私は初めてなのもあってワクワクしているけれど、綾人さんはやっぱり疲れているのだろう。 少しだけ寂しい気持ちもあるけれど、私がしっかりと観て後で感想を伝えよう。 そう思うとなぜか使命感のようなものが生まれてきて、瞬きもそこそこに私は食い入るように天井を見つめ続けたのだった。
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