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「本っ当にごめん!」
プラネタリウムを出てからもう何度も、綾人さんはこうやって私に謝る。
「そんなに謝らないでください」
「でも寝るとか俺最悪じゃん」
「そんなことありません。プラネタリウムのホールは薄暗くてナレーションも落ち着いた感じでしたし、眠くなる気持ちは分かりますから」
「ホントにごめんね、梅ちゃん」
シュンと項垂れる綾人さんは、可愛い。
こうして時々見ることのできる綾人さんの可愛らしい一面が、私はとても好きだった。
「きっと疲れているんです。仕方のないことです」
「いや、そうじゃなくて」
「え?」
「う、ううん。とにかく、ごめんね」
「もう、謝り過ぎです」
そんなに私は、心許せない相手なのか。
きっとそんなことはないのだろうけど彼があまりにも謝るから、思わず頬を膨らませてしまった。
「可愛い…」
「えっ」
「梅ちゃんのちょっと拗ねたような顔、初めて見た!もう一回、もう一回見たい!」
「な、何言ってるんですかっ」
「お願い」
「嫌ですっ」
急に恥ずかしくなって、プイッとそっぽを向く。
そんな私の耳元で、綾人さんの楽しそうな笑い声が響いた。
それから目についたお洒落なカフェでお茶をして、気が付けば時間は夕方近く。最近、陽が落ちるのがだんだんと早くなっているように感じる。
「夕飯どうしようか」
ポケットから携帯を取り出した綾人さん。きっとお店を調べようとしているのかな、と思う。
「あの」
「ん?」
「綾人さんが嫌でなければ、お家で食べませんか?」
「ウチ?」
「そうすれば、ゆっくりできるかなと」
なぜか綾人さんは、とても困った顔をした。
なんとなく、今日の綾人さんは様子がおかしい。
待ち合わせに遅刻したことも初めてだし、どこか上の空だったり、プラネタリウムでのこともそうだ。
きっと、仕事が忙しくて体力的にも精神的にも疲れているんだと思う。
せめて夕飯だけでも、落ち着いて食べてほしい。
「ごめんなさい、嫌なら」
「あ…嫌とかじゃないんだ。ごめんね」
「…」
「梅ちゃん?」
「あのできれば私は、まだもう少し綾人さんと一緒にいたいなと思ってしまうのですが…わがままを言ってしまってごめんなさい」
理解のある彼女なら、今日はもうお互い家に帰ろうというのかもしれない。
私、欲張りになってしまったのかな…
まだ、離れたくないと思ってしまう。
「梅ちゃん…」
綾人さんは哀しげに、私の名前を呼んだ。
「ホントにごめん、そんなこと言わせて。今日は、ウチで食べよう。俺だって、このまま梅ちゃんと別れるなんて嫌だから」
本当はまだ引っかかるけれど、それ以上追及することはしなかった。
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