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二人でスーパーに立ち寄り、綾人さんが買い物カゴを手に取り私がその中に食材を入れていく。
いつだったか、綾人さんに「新婚さんみたい」だと言われてとても恥ずかしかったことを思い出した。
「今日は何にしようか」
「綾人さん、何か食べたいものはありますか?」
「そうだなぁ、俺は…」
二人であれこれと意見を出し合いながら、夕食の買い物を済ませた。
こんな風に自然に対等でいられることは、本当に幸せだと思う。
「お邪魔します」
もう何度目になるだろう。やっぱり、いつ来ても初めのうちは緊張してしまう。
「…」
軽くお辞儀をして、玄関で靴を脱いだ。そんな私を、綾人さんがジッと見つめる。
「あの…?」
「ん?あぁ、ごめんね。どうぞ上がって?今日は前よりは散らかってないと思うから」
「…」
誤魔化すように笑う綾人さんに違和感を感じながらも、それ以上の言葉が出てこない。
綾人さんから言わないことを、無理に聞くこともできない。
今日一日ずっと薄らと抱えているモヤモヤを、ゴクンと飲み込んだ。
「いい匂い、おいしそう」
「綾人さんが手伝ってくれたおかげです」
「ほとんど役に立てなかったけど」
「そんなことありません」
「もっと、勉強します」
「フフッ」
二人で笑い合って、合掌をした。
今日は、綾人さんのリクエストでお肉だ。牛肉を甘辛く炒めたものや厚切りの豚肉を味噌ダレで焼いたものを、サニーレタスで巻いて食べる。
他にも副菜を何品か作り、綾人さんはビール、私は軽いチューハイを選んだ。
「これ、凄いおいしい」
「ホント、野菜と合いますね」
「梅ちゃんの料理は最高だなぁ」
「いつも喜んでもらえるから、嬉しいです」
「毎日、こうやって一緒にご飯食べられたらいいのに」
綾人さんはお肉を頬張りながら、サラッとそんなセリフを口にする。
「えっ」
「え?」
無意識だったのか、綾人さんは変わらずニコニコしたまま。
「あ…いえ」
私も彼に倣って、野菜で巻かれたお肉に勢いよくかぶりついた。
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