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戻り際、店員さんが、
「お花準備できましたので、帰りにお申し付けくださいね。」
と、私に声をかけてくれた。
テーブルを二つ挟んだ向こうから、
「お花頼んでらしたの?」
と、質問が飛んで来る。
少し驚いたけれど、あまりにも自然で屈託の無いハルコさんの様子に、警戒心が解かれた。
「はい。これから実家に帰るので、それで。…祖母に。」
「そう。」
ハルコさんの視線が移る。つられて私もそちらを向くと、先程の店員さんが出来上がった花束を、ガラスのショーケースの中に移動させているところだった。
「…すてきね、とても。」
「…喜んでくれるといいのですが。」
「だいじょうぶよ。」
ハルコさんは、明るくて温かで安心する声の持ち主だ。
「ねえ、そちらに移ってもいいかしら?」
「え?」
「あなたのお席に。」
「えっとー…はい。いいですよ。」
断る理由もなく…というか、なぜだか断る気持ちにもならなくて了承すると、ハルコさんは、水と珈琲を持って本当に移動してきた。
ごくごく普通の花屋からすっかりお洒落に変身したこの店のことなど雑談は楽しく進んだ。会話の合間、ハルコさんは、かなりの頻度で視線を窓の外に向ける。尋ねると、孫が習い事をしているビルが見えるのだという。お孫さんの帰りを、いつもここでこうして待っているのだそうだ。ハルコさんが、わざわざ私と向かい合わせに座った謎が解けた。
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