0人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしました?」
なにやら戸惑っている様子に、思わず尋ねる。
「あの、なんだったかしら、絵がでるの。あれを送りたいのだけど…」
「ああ…それなら…えーと、ちょっとお借りしてもいいですか…」
「ええ。ごめんなさいね。」
「いえ。」
「読んだって分かるから、返事はいらないって言われても。ねー。なんか送りたいじゃない。でも、文字は難しくて。暗号みたいなまま送っちゃったりして。そしたら、これなら、選ぶだけだからいいでしょって。なのに、選ぶところにも行けないんだから、やんなっちゃうわね。」
とりあえず、よく使っていそうなものを開いて見せると、ハルコさんは、チアガールの格好をしたピンクのウサギがポンポンを振っているものを選んだ。
「ピンクお好きなんですね。」
「え?」
「スマホもピンクだから。」
「ああ。そうなのよ。あの子が選んでくれて。」
スマホを愛おしそうに撫でるハルコさんは、本当に幸せそうだった。
自分の祖母の笑顔が重なった。鼻の奥がツンとしてくる。
ここのところ、特に何がという訳ではないけど、なんとなく塞いだ気持ちになっていた。何がきっかけかも分からない。分からないのだから、どうしようもなくて、ただ、この感じが通り過ぎるのを待つつもりでいた。けれど、いや、だから…久しぶりに実家に帰りたくなった。今日、この日に。
最初のコメントを投稿しよう!