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「あの…祖母も、私の祖母も…その…」
「自慢の孫よ。あなたのおばあさまにとって、あなたは自慢の孫。」
私は、思わず俯いて涙をこらえる。
「偉いわね。ずっと頑張って来たのね。これからも頑張るのでしょう?」
「はい。…はい!」
私は、ギュッとヴァイオリンケースを抱きかかえた。あのメロディと祖母の声が聞こえた気がした。
(そういえば…)
「ハルコさん。エトワールって、星って言う意味なんですよ。」
私の唐突な言葉に一瞬きょとんとしてから、ハルコさんはニッコリと笑った。
何度も振り返って、何度も会釈をして、ハルコさんに別れを告げる。
入口では、店員さんが、私のお願いした花束を抱えて待っていてくれた。花が大好きだった祖母。次は、もっとカラフルなものにしょう。
(そうだ…)
私は、思い立って、店員さんに言った。
「あの…すみません、もう一つ花束お願いできますか?」
「え?」
「あの方に。」
「あぁ!はい。かしこまりました。お色味はどんな感じに致しましょう。」
「もちろん、ピンクで。」
私は、軽やかに通りに出て実家へと続く緩やかな坂を上り始める。
手には真っ白な花束とヴァイオリンケース。
そうだ今日は、おばあちゃんにヴァイオリンを聞いてもらおう。少しは上手くなった《きらきら星》を。
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