夏の病

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夏の病

「暇だー」  僕は昔から学校という場所が好きだった。友達がいるし、休み時間は思う存分遊んだし、授業はまああれだけど無駄に手を挙げる子どもだった。  とにかく、学校に行くのが毎日楽しみだった。 「暇ー…ぐっ」  夏休みも後半戦。畳の上でだらだらしていた僕の背中に何かが乗った。何かというのは万里さんで。 「暇なら外へ行け少年」  ちっこいとはいえ成人女性。重い。苦しいまま僕は言う。 「だって誰も遊んでくれないんだもん」  桜井はお姉さん夫婦についてハワイに行ってるし、桑田はこの前の合コンで落とした美人なカノジョとデートらしいし、小山田は中学のときの友達と海。丈山はめんどくさいから連絡をとっていない。 「稲葉くんは?」 「里帰り中」  僕は昔から学校が好きだったから、夏休みが始まった頃はテンションマッスク、友達とプールに行ったり家族で旅行に行ったり、ラジオ体操ですら友達と会えるから楽しかった。けれどそれも後半になると、遊んでくれる友達も減るし宿題は残ってるしでテンションはガタ落ち、早く学校が始まればいいと思う変わった子どもだったのだ。 「万里さん遊んで」 「今から仕事だっつの」 「夏休み終わるまでまだ2週間もあるよう」  じたばたと暴れる僕を、僕の上から退きながら万里さんが呆れたような笑い顔で見下ろす。 「もうダメだ僕は死ぬ」 「そのくらいで死ぬかバカ」 「だって」  1週間も会ってないんだもん。 「きっと万里さんが帰ってくる頃には脳みそが溶けて身体中の水分が体外に出ていって干からびてちいちゃくなって誰にも気付かれずに死んでるんだ」 「何の病気よ」  だって1週間も会ってないんだ。しょうがないじゃないか。 「恋煩いです」
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