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◯まるで子供のイタズラのように。
漫画一冊読み終わった頃に、知玄はやって来た。
「ちゃんと細工はしてきただろうな」
俺が問うと、知玄はこくこくと頷いた。俺が部屋で「また何かやってる」だけならお袋は今更気にも留めないが、知玄が部屋にいないとなれば騒がれる。だから、部屋にいる風に装えと、知玄には予め言い含めておいた。知玄の部屋の方からは、ロックの重低音が微かに漏れてくる。
知玄は寒そうに自分で自分の二の腕を擦る。
「来な」
被っていた毛布を上げて、知玄を招き入れた。毛布を鼻の上まで被ってやっと、知玄は口を開く。
「この部屋、エアコン利かせ過ぎじゃないですか」
「いいんだよ。暖かい季節だからこそ、わざと部屋の気温下げて、布団被って寝んの」
「贅沢ですねぇ」
知玄はくっくっと喉を鳴らした。
「この毛布いいな、肌触りが良いし、お兄さんの匂いがいっぱいします」
「いいだろ。そのまま朝まで眠っててもいいよ」
「それは嫌です」
毛布の中をごそごそ移動してきて、知玄は俺に覆い被さる。
「本当にいいんですか?」
「おう」
俺には拒む権利がないんだ、αと違って。
「ただ約束だけは守れ」
「はい」
約束は、大声を出さないこと、俺の言うことをきくこと、俺が嫌がることをしないこと。
「ほんとに守れる?」
「守れます」
俺達はΩとαだが、獣じゃあねぇんだ。ちゃんと人間同士の遊戯をしよう。知玄のうなじに腕を回し、引き寄せる。
「じゃあ誓いのキスをしな」
知玄は神妙な面持ちで目を閉じ、俺に口付ける。俺は目を開いたまま、それを受ける。ヘッタクソだなぁ。こいつは飽きっぽい訳でもないのに連れている女の子がころころ代わるが、その理由が察せられてしまう。
こんな初歩から、教えなきゃならんのか。ま、俺だって初めての時は手解きを受けた。それにリード権くらい取れなきゃ、割に合わなくてやってられないしな。
「ほら、そう雑にするな。つまんないエロビなんか真に受けんなよ。ここはもっと丁重に扱え。自分だってそうされたら嫌だろ。男同士なんだから、分かんだろ」
ちょっと目を離せばすぐに逸る無骨な手に手を這わせ、宥めすかせ、導く。案外、呑込みが早い。
「そう。ゆっくり、少しずつだ。……お利口さん」
あぁ、きっつ。ゴムのサイズ、1サイズ大きい方がよかったかな。破れたらやだな。締め付け過ぎないように、呼吸を調えて、少し待ってから許可を与える。ひと突きされるごとに、じわっと身体が熱くなり、汗が吹き出る。知玄は身体を起こして毛布を剥ぎ取った。
「お兄さん……」
常夜灯の下、知玄の潤んだ目が輝く。俺は頷いて、目を閉じる。一定のリズムでベッドが軋む音に耳を傾ける。ゆっくり、ゆっくり。知玄の舌がぴちゃぴちゃと、労るように、首筋を愛撫する。吐きかかる熱い吐息は切なそうに震えている。
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