◯どうどう!

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◯どうどう!

「お兄さん、その痣は!?」  何、心配してくれんの? と思ったら、何かおかしなスイッチが入っちゃっただけっぽい。知玄は俺を畳に押し倒すと、クンクン匂いを嗅いだ。 「よし、誓二さんの臭いはしないっ」  はぁ? 何であいつが? よく分からんけど、最近相手してやってなかったから溜まってんのかなと思い、知玄のズボンの前を探ったら、やっぱりカチカチだった。 「したい?」 「えぇ。そりゃもう存分に。でもお兄さん、お身体の調子がよくないのでは?」 「少しだけなら平気だ。俺も、ちょっとやりたくなってきたし……あ、こらっ」  その場で始めようとする知玄を宥めて、俺の部屋に場所を移動する。 「どんな体位がいいですか?」 「横んなって、後ろから抱えてするやつ」 「お兄さん、それ好きですよね」  好きっていうか、実用性だよな。こうやると深く入り過ぎないし、無茶苦茶に突かれなくていい。  あぁ、やっぱ挿入されただけでちょっとキツい。下腹で、臓物をぎゅっと鷲掴みされる感じ。腹に力が入らないよう、大きく深呼吸する。そしたら感じてんだと思われたのか、知玄は苦しい体位なりに突き上げようとして来るし、前を乱暴に扱いてくる。 「ダメ、それきっつい。ゆっくり……ん、それくらい……」  何だろ。俺、またΩの匂い、過剰に振り撒いてんのかな。自分じゃよく分かんないんだよな、自分の匂いって。ただ、今は発情期(ヒート)は起きないってことだけは言える。発情期の時みたいに、中が熟れて痺れる感じは、ちょっとするけど。あの辛い、頭がおかしくなる感じはしない。これ、正気が保たれた状態だと、けっこう気持ちいいな。  それにしても知玄の野郎、謎に盛ってんな。αにも、Ωみたいにコントロール不能な時期があんのかな。 「うぅっ……」  下腹が苦しいのを通り越して痛くなってくる。内蔵が引き搾られて、圧し出された血が頭に昇ってくる感じ。体内の血流が変わるほどってどんだけ? これは良くない。深い呼吸を繰り返し、合間に、ゆっくり、ゆっくりと、うわ言みたいに繰り返す。    Ωの、発情期が薬でも抑えきれないほど暴走する時って、本当辛ぇんだよ。三日三晩、ヤられる事しか考えらんねぇで、αの足下に跪いてでも、首の弱いとこを晒して「お願いここ咬んで」って泣いてお願いするんだ。  番の契りを結ばずにするのは、気休めにしかならなくて、だから嵐が過ぎ去ったあと、激重い後悔しか残らねぇし、αに対しては、責任取る気もねぇ癖に好き放題しやがってって、怨みの感情が積もりさえする。いや、Ωの性欲解消に付き合わされるαだって、大変なはずなのにな。けど、どうしてもムカムカするわけよ。だから、何勘違いしたのか知らんけど、俺が誓二さんと今更どうにかなるなんて、ねぇよ。 「もう俺、完全にお前のもんなんだよ」  知玄の手首を掴んで、その手を俺の下腹に持っていく。温かい手に撫でられると、ほっと緊張がほどけていく。
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