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彼女の落とし物
大学の授業が終わると、いつものようにイヤフォンでお気に入りの音楽を聞いて、いつも同じ道を通って家に帰る。
「いてっ」
「あ、すみません!」
完全に俺の不注意だ。ノリノリで聴いてたなんてはずかしすぎる。彼女はぶつかった時に落としてしまった本を拾って、
「すみません…」
とだけ言って急ぐように行ってしまった。
俺は一息ついて下を見ると何かが落ちていた。
「手帳…? 彼女のかな…」
その落とし物を拾い、彼女に会ったら渡そうと思った。
2日後…
またいつものように音楽を聞いて帰っていると、前の方からあの時の彼女が歩いていた。ぶつかった時は申し訳なさで顔をよく見ていなかったが、よくよく見ると何か引き込まれるような綺麗な顔をしていた。
「あ、あの、」
手帳を返そうという気持ちと、よく分からないが話したいと思ったのか体が勝手に動いた。
「あの時の、」
「あの〜、この前は俺が携帯いじってて、それでぶつかってしまってほんとすみません!」
ノリノリで聴いててぶつかったって、とてもじゃないけど恥ずかしくて言えない。
「私も前を向いてなくて…すみません」
「…あの」
手帳のことを言わなきゃいけないのに…
「よかったらこの後…お食事しませんか?」
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