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不良と問題児が出会ったら
アラン・ロジャーと言われた人物は青く男にしては長い髪を低いとこで一つにまとめており、その瞳は珍しい紫の色をしていた。
しかも、その目付きは鋭く、同い年とはとても思えないような雰囲気を醸し出している。
そんなアランとゾーイの一触即発を見事な機転で回避してくれたシン・ドンゴンは黒髪の短髪に緑の瞳で、白いヘアバンドをして前髪を上げている。
けど、待て、アラン・ロジャーってどこかで聞き覚えが……そうだ。
「オーケー、アランにシンね？」
「お、おう……！」
「これで本当に終わりね？ まだ自己紹介しようって奴がいるなら自分にその価値があるって証明して、自信がないなら黙ってて？ 話が進まないから」
「え!? ゾーイ、俺はともかく、アランの名前を聞いて驚かないのか!?」
シンはそれは心底意外だと、そして期待外れだというような反応を示した。
それは仲間らしきデルタとソニアも同じだったが、二人は反面今のその状況を面白がっているようだった。
やっぱり、アランは……これちょっとヤバいんじゃないのか？
ゾーイは本当に知らないのか？
俺がこれでもかと頭を悩ませていると右肩をトンと叩かれ、振り返るとそこにはサトルがいて俺に耳打ちをしてくる。
「昴、忘れたのか？」
「そんなわけないだろ!? まさかこんなとこで有名人に遭遇するとは……」
「嬉しくない偶然だな、ハハッ」
「笑いごとじゃないだろ!?」
「まあ、冗談はこれくらいで」
「頼むから、こんな状況でそういう冗談はやめてくれ……サトル、悪化する前に止めた方がいいと思うか？」
「けど、さすがにゾーイも入学式のあの事件ぐらい覚えてるんじゃないか？」
俺達のナサニエル入学式当日にその事件は起こった。
当時の三年の先輩数十人がとある一年生に因縁をつけて、その結果その一年生に全員まとめて病院送りにされるという事件だった。
被害者の中には全治半年という重傷者も数人いたらしく、目撃者も血の雨が降ってきたかと思ったと話したのが元になり、その事件は血雨事件と語り継がれるようになっていた。
その事件を起こして、入学式当日に停学をくらった張本人が目の前にいるアラン・ロジャーってわけだ。
ナサニエルの上層部で最重要危険人物と指定されて次々と問題を引き起こす機械工学科の生徒がいるとは噂で聞いてたけど、それもこのアランだろうな。
俺は無意識のうちに顔が強張り、謎の緊張感から逃れようと、その場から一歩後退っていた。
視線だけを動かすと、みんな明らかに警戒心剥き出しになってるし、隣のジェームズに関してはもう泣いていた。
けど、明らかにそんな微妙な空気は読む気がないとばかりの人物がいた。
「は？ 何を驚けってのよ？」
「いやまあ、何て言うか……本当に聞き覚えとかないのか？」
ゾーイはシンにそう言われると、アランに近付いて行った。
アランの方が背が高いから、ゾーイは下から穴があくのではないかというほどアランを見つめていた。
どちらとも決して目を逸らさず、これでもかと沈黙が続き、コックピットの空気が少し下がった気さえする。
けど、パッとゾーイは顔をシンに向き直ったと思ったら……
「こんな目付きも口も態度も悪い悪人面の知り合いはあたしにはいないけど？ そもそも、この悪人面よりあんたの顔の方が覚えやすいわよ、何かムカつく顔だってよく言われない？」
「は……!? え、な!?」
ゾーイはシンに向かって真顔で、一切の容赦なく言い放った。
本当にゾーイは大物だと思う。
一瞬で、コックピットの空気に違う意味でヒビが入ったのがわかる。
あまりの出来事にシンがまるで壊れたロボットみたいに喋ることができなくなってしまってる横で、デルタとソニアは涙を流しながら爆笑して、アランはゾーイを睨んでいる、その視線だけで数人は殺せそうな迫力だ。
どうやって立て直すんだよ、この地獄の状況を……
そんなこの場の全員の胃が痛くなるような心配とは裏腹に、ナサニエルは突然の激しい揺れに襲われたのだった。
「そういえば、こんなことをしてる場合じゃなかったわね」
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