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それからしばらくは、前島さんが進藤さんの話をしてくれた。
彼女だというのを否定しようにも話を聞いてくれないので、諦めて否定するのをやめた。
でも、いろいろ話してくれたおかげで、勤務中の進藤さんを垣間見ることができて嬉しかった。
その後、前島さんは美奈に話を振り、ほとんど二人で喋っていた。新井さんは相槌を打つ程度で静かに飲んでいた。
私は、突っ伏している進藤さんを見ながら考えていた。
前島さんの話によると、最近進藤さんは元気がなかったという。なんで連絡くれないんだ、て言ってたって。
それって私からの連絡を待ってた、て思っていいの?
進藤さんには想い人がいたんじゃないの?
別の人と勘違いされてないかな?
本当に私がここに来ても良かったんだろうか。
「んん~……」
「お!進藤起きたか?彼女迎えに来てるぞ!お前もう今日は帰れ」
ゆっくり顔を上げた進藤さんは、半分眠ったような眼でぼーっと私を見る。
「あれ?志桜里?………ごめんな……」
何を寝ぼけているのか、突然謝って来られてびっくりする。
その言葉が、前島さんの痴話喧嘩説を確定する形となり、二人で帰らされることになる。
前島さんはもう、私が何を言っても聞いちゃいなかった。
美奈に助けを求めるも、なぜか知らん顔。
店の前でタクシーを拾うと、抵抗しようとする私を、いいからいいからと一緒に押し込んだ後、前島さんに言われる。
「志桜里ちゃん。明日進藤休みだから、しっかり仲直りしといてね!」
「え、ちょっ!美奈!」
「私のことはいいから。しっかり彼と話し合ってね」
焦って美奈を見るも、前島さんの仲直りの話に加担するような口ぶり。
急展開に頭が追い付かない。
そして、寄りかかられている右側がもの凄く熱い。
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