自覚

6/6

503人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
それからしばらくは、前島さんが進藤さんの話をしてくれた。 彼女だというのを否定しようにも話を聞いてくれないので、諦めて否定するのをやめた。 でも、いろいろ話してくれたおかげで、勤務中の進藤さんを垣間見ることができて嬉しかった。 その後、前島さんは美奈に話を振り、ほとんど二人で喋っていた。新井さんは相槌を打つ程度で静かに飲んでいた。 私は、突っ伏している進藤さんを見ながら考えていた。 前島さんの話によると、最近進藤さんは元気がなかったという。なんで連絡くれないんだ、て言ってたって。 それって私からの連絡を待ってた、て思っていいの? 進藤さんには想い人がいたんじゃないの? 別の人と勘違いされてないかな? 本当に私がここに来ても良かったんだろうか。 「んん~……」 「お!進藤起きたか?彼女迎えに来てるぞ!お前もう今日は帰れ」 ゆっくり顔を上げた進藤さんは、半分眠ったような眼でぼーっと私を見る。 「あれ?志桜里?………ごめんな……」 何を寝ぼけているのか、突然謝って来られてびっくりする。 その言葉が、前島さんの痴話喧嘩説を確定する形となり、二人で帰らされることになる。 前島さんはもう、私が何を言っても聞いちゃいなかった。 美奈に助けを求めるも、なぜか知らん顔。 店の前でタクシーを拾うと、抵抗しようとする私を、いいからいいからと一緒に押し込んだ後、前島さんに言われる。 「志桜里ちゃん。明日進藤休みだから、しっかり仲直りしといてね!」 「え、ちょっ!美奈!」 「私のことはいいから。しっかり彼と話し合ってね」 焦って美奈を見るも、前島さんの仲直りの話に加担するような口ぶり。 急展開に頭が追い付かない。 そして、寄りかかられている右側がもの凄く熱い。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

503人が本棚に入れています
本棚に追加