ありえない

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『もしかして朝帰り?』 「ぶふっ!」 シャワーから出て、美奈からの「どうだった?」というメッセージに気づいてすぐ彼女に電話をかけた。 「ちょっと!電話に出た一言目がそれ?!」 『だってもう11時よ?今まで寝てたの?』 「いや、違うけど。今メッセージに気づいたから。てか!どうだった?て、なによ?」 『なによ?とは、なによ?そのまんま。どうなったかな~て気になって』 美奈は仕事中のようで、電話の向こうからザワザワとした声が聞こえる。 「ところで美奈、今話してて大丈夫なの?」 『少しなら平気。で?』 「……思い出せないから、美奈に電話してる」 『覚えてないの?』 「そう、なんだよね~。酔って記憶なくすとか、あり得ないと思ってたんだけど、昨夜から今朝にかけて綺麗さっぱり!まったく思い出せないの!こんなこと初めて!自分でもびっくりよ!」 なんとなく、居酒屋で居合わせた隣の席の人たちと一緒に飲んだことは思い出したけど、そのあとのことはサッパリ思い出せない。 こんなことは過去に一度もないし、記憶なくすほど酔うってどんだけよ!とバカにしてた部類なので、自分がその状況に陥ってることが、いまだに受け入れがたい。 『まぁ、あんだけ酔ってればね、もしかして〜とは思ってたけど』 「そんなに?」 『私が見た中では過去最高。いや、最低と言うべき?』 「もうどっちでもいいけど、…はぁ……へこむ……」 電話の向こうの雑音が聞こえなくなった。 美奈が場所を移動したのかもしれない。 『ところで、今朝はどうやって帰ってきたの?』 「どうって、普通に電車だけど?」 あの男が車で送ると言っていたが、そんなの家がバレるし、電車も動いてる時間だったから、なんとか駅まで出れば電車で帰れるし。 『ふ~ん。自分の家じゃなかったんだ』 「あ……」 やってしまった…… 美奈は勘がいいので、過去にも何度かこういった誘導尋問にひっかかっている。 今朝電車で自宅に帰ってきた、てことは、昨夜はどこにいたの?て話になるわけで、冒頭の美奈の「朝帰り?」という質問を肯定することになる。
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