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焦った。
拒否されたから、気持ちが通じ合ったと感じたのは、また俺の勘違いなのかと思った。
イヤじゃなくて、今日がダメ…
一瞬考えてしまったが、月に一度の女性特有の理由だと気づいた。
ちょっと……いや、もの凄く残念だが仕方ない。
まだまだ話したいこともあるし、もう少し居て欲しかったが、彼女は帰りたいと言う。
かなり沈んだ声を出してしまったが、そりゃそうだよな、男の家には必要なものなんて何もないから家に帰りたいだろう。
それに、痛みとかも仕事を休むほどキツい人もいると聞くし、俺がいたらゆっくり休めないかもしれない。
それならば、せめて彼女を送って行こう。
そう申し出たら、今度は拒否されなくて安心する。
彼女のマンション前に停車したが、彼女は下りるのを躊躇っているような感じ。
それをいいことに、部屋までついて行くことにした。
これで、彼女の部屋がどこかわかる。
部屋の前まで来ると、離れ難くなってしまった。
でも、なかなか部屋に入ろうとしない彼女。
ひょっとして同じように思ってくれているのではないか。
「俺の自惚れかもしれないけど、離れたくない、て思ってる?」
「え……」
たぶんそうだ。
そう思ったら抱きしめたくなった。
が、ここは人の往来があるマンションの廊下だ。
「ちょっと玄関まで入らせて」
そう言ってドアの内側に入る。
「俺と同じだ」
志桜里を抱きしめる。
やっぱり彼女の腕が俺の背中に回される。
なんか、幸せだ。
離したくないな…
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