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そんな時に限って引き止められるのだ。
先輩と談笑していた坂上さんに声をかけられた。
挨拶だけ済ませて通り過ぎようとしたのに、とりとめもない話に巻き込まれる。
先に退勤したはずの早苗ちゃんも捕まっていた。
仕事の話ではあるものの、急ぎの案件にも思えない。やきもきしながら話を聞いてはいたが、坂上さんなんかにそれ以上引き止められたくなくて、失礼だとは思ったが強引に会話を終了させて先を急いだ。
急いで外に出ると、少し離れたところに久々に見る愛しい人の姿があった。
「進藤さん!」
駆け寄って抱きついてしまった。
「会いたかった…」
「俺も」
しかし、
「熱烈な抱擁は大歓迎なんだけど、いいの?ここ会社の目の前だけど」
と言われてハッとした。
そして急いで離れる。
「そうでした……恥ずかしい…」
「俺は嬉しかったけどね。会いたかった、て伝わったし」
嬉しそうに言われる。
「来てくれてありがとう」
「うん。俺も、いい加減限界だったし」
進藤さんも会いたいって思っててくれたことが嬉しい。
会いたい気持ちが募って抱きついてしまったけど、すぐ後から退勤してきた早苗ちゃんにばっちり見られていたことは、後日聞かされた。
もちろん揶揄われながら質問攻めにされたのは言うまでもない。
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