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そして、ずっと気になっていたことを聞く。
「私と初めて会ったのって、あの居酒屋じゃないんでしょ?どこで会ってたの?」
そう言うと、進藤さんはしばらく考えてから不機嫌そうに答える。
「講習」
「え?」
「去年も救命講習受けただろ?」
「ウソ?!そこにいたの?」
もう一年以上前になる。
「全然わかんなかった〜。確かに指導員さん何人かいたもんなぁ。でも、あの時参加者多かったのに、よく覚えてたね」
あの何人かいた指導員さんの中の一人ってことか~。
全員と会話したわけでもないから、そりゃ記憶にないよ。
「違うって。俺が志桜里に指導したから」
「え?」
「認定証も俺が渡したし」
「ええ!?ウソ!!だって去年担当してくれたのって、坊主頭の人で…」
「それ、俺だし」
「え?!ホントに?あの時の坊主頭の人?!」
「頭しか印象に残ってないのかよ」
「う……だって!大人になって坊主頭に出くわすことなんてなかったから…」
そっか。あの時の講習の指導員さんだったんだ…
髪型が違うから全然わかんなかった。
でも、なんとなく納得してしまった。
私は弟の小さい頃を思い出して懐かしく思っていたし、講習の時は私を気遣って、触れないように接してくれた優しさに好感をいだいていた。
そんな彼には安心できたし、彼の纏う雰囲気が心地よかった。
だから、居酒屋で会った時、無意識に進藤さんを求めてしまったのかも。
なんだ。
私もはじめから進藤さんのこと好きだったんじゃん。
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