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頭の機能が正常に作動してないが、志桜里がなぜか俺の服を脱がそうとしていることだけはわかった。
「何やってんの?」
一応聞いてみる。
「ん~、きすまーく、つけてみたい」
キスマーク?
何故急に?
そして思い出す。
居酒屋を出ようとしていた時、出入口付近の若者の団体がキスマークの話でバカみたいに盛り上がっていたのだ。それを聞いていたのだろう。
脱いでと言われ、仕方なく服を脱ぐと、志桜里が胸元あたりに、ちゅっちゅっと口づけしてきた。
…くすぐったい。
「れんれんつかない」
「もっと強い力で吸わないと」
「ん~?…あ!そーら。あらしにつけてみて~」
「は?!」
「ほらほら」
変に催促されてるけど、ホントにいいのか?
怒るなよ?
そう思いながらも、胸元にちゅうっと吸い付いてキスマークをつける。
「ついた?」
「…うん」
肌が白いので、結構くっきりついてるけど、大丈夫か?
「見える?」
「あー、ほんとらー。おもしろーい。あはははは。ねえ、もっと」
「え?!」
もう知らねえ!
俺は言われたからやっただけだから、俺を責めるなよ?
気が付けば、何ヶ所か赤くなっている。
これ、やばいな。
俺がマーキングしたみたい。
ってか、これって誘われてる?
いやもう誘ってるよな?
ああ、もうダメだ!
「志桜里っ!」
彼女にキスをしようとして気づく。
寝て…る?
彼女はスースーと寝息を立てて眠ってしまっていた。
……え、マジで?
……何の拷問?
一人だけ平然と幸せそうに寝やがって……
くそ!もういい!
朝起きた時にパニックになるが良い!
やけくそになって、布団をかぶって彼女を抱きしめ、横になった。
まったく眠れそうにはないが、会いたくても会えなかった人が今、この腕の中にいる。
そのことが嬉しくて、とんでもなく幸せだった。
-【おまけ】あの夜の真実 (完)-
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