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ストレスの元
非日常な一夜を過ごしてしまったが、日常の朝は普通にやってくる。
「おはようございまーす」
気持ちを入れ直して元気に挨拶する。
が、朝一番に出会ってしまった嫌味上司に気分が萎えそうになる。
「ああ、横田くん。一昨日の報告書がまだ出てないみたいだけど、今出してくれる?」
挨拶も何もなく、用件だけ告げてくる上司。
ストレスの元凶である。
「今、ですか?」
「そう、今」
「すみません。えっと、まだ…」
「もしかしてまだ書いてないの?」
食い気味にそう言って、責めるような目で見てくるこの上司が苦手だ。
だいたい、一昨日は閉店間際の出来事だったし、あのあとたっぷり事情聞かれた挙句、事務所を閉めるから早く帰れと言われて、報告書をまとめるような時間はなかった。
それに、いつまでに出せとか、急いで提出しろとは言われていない。
「報告書ってのは、終わったあとすぐ書くものでしょ」
「申し訳ありません。ですが、私は昨日お休みをいただいてまして…」
「書く時間がなかった。そう言いたいの?」
また私の言葉を遮って、じっとりした目で見てくる。
「最近の若い子はなってないな~。すぐ言い訳をする」
唇を噛み締めながら、
「申し訳ありません。今日中、いえ、午前中に出しますので、もう少し待ってください」
と、なんとか返答する。
「ふうん。ま、今回は大目に見るけど、次から気をつけてよ。こんなことが頻繁にあったら困るからね。俺も暇じゃないし」
暇じゃないって、いつ見ても暇そうに見えますけど?
報告書っていうけど、あんたはハンコ押すだけてしょーが!何が困るのよ。
いちいちイヤな言い方して、こんな人が課長という立場についていることが納得できない。
最も尊敬できない上司だ。
「あ、それと」
去っていくと思われた嫌味課長は、振り返ってまだ何か付け足す。
「そんな顔はお客様の前では絶対しないでね」
顔が引きつる。
そんなことわかってるっつーの!
でも、この嫌味課長に作り笑いができないってことは、私もまだまだってことね。
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