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「あー、もう!やってらんない!」
食堂で吐き出した言葉に、営業の二つ先輩の坂上さんが反応する。
「横田は内勤になって何年目だっけ?」
「…6年目です」
「なんでずっと内勤やってんの?外商希望すればいけるんじゃないの?」
「う~ん。だって、外商て訪問販売じゃないですか」
「訪問販売?!まぁ間違っちゃいないけど、馴染みの客しかいねーわ!」
愉快そうに笑うこの人は、いわゆるイケメンの部類に入り、おばさまたちに人気なのである。
その高い顔面偏差値の使い方をよくわかっていて、笑顔で言葉巧みに商品を売り込んでいく様は、尊敬に値する。
「それに、お前売り場に顔出し過ぎじゃね?販売は売り場のスタッフに任せて指示だけしてりゃいいのに」
「いや、そういうわけにもいかないですよ。店内のことがわからなくなっちゃうので…」
「真面目だな~。だけど、そうやって不特定多数を相手にしてるから、こないだみたいなことも起こるんじゃん。イヤな思いするの横田だぜ」
「う。そうですよね~……」
「お前が外商希望するなら、俺の客まわしてやるぞ。俺、法人専門にしたいんだよな~」
「え~セレブおば様に人気なのに?」
「結局は個人だから、売上もたいした額にはなんないんだよ」
時々、坂上さんのこういった売上至上主義みたいな発言が気になる。
営業をするうえで、売上や利益の数字は切り離せないものではあるけれど。
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