回顧

1/9

362人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ

回顧

「お疲れ〜」 「ほんっと!お疲れだよ!」 カチンッ! 今日は久しぶりに美奈と飲みにきている。 「どう?今年の新人たちは」 美奈がこう聞くのは、現在新入社員の研修中だからである。 この時期、各売り場に新人が散りばめられていて、私も、接客対応の仕方など気になることがあれば声をかけている。 「まだなんとも……美奈の方は?新生活応援フェアはもう終わりでしょ」 「まぁね。でもすぐ、九州物産展よ」 美奈は販売促進部で、イベントやセールの企画運営をおこなっている。 季節ごとのイベントはもちろんのこと、突発的なフェアなども企画して行っている。催事場エリアは常に配置換えされていて忙しそうだ。 「物産展もさぁ、出店するのは馴染みの店が多いから、そろそろ入れ替えが必要だと思うんだけどね。調査なら私喜んで行くのに」 「いいなぁ、それ。仕事だって言って堂々と九州旅行するんでしょ?私も行きたーい」 「それを思うとバイヤーでも良かったかな~。売れそうな商品探して全国各地を回れそうじゃん!なんなら海外もアリだし!」 百貨店には、商品を買い付けて仕入れを行うバイヤーという業種がある。 どんな商品がどれくらい売れそうかという目利きが必要だし、売れ行き傾向のリサーチは常に行わないといけない。 「でもさ、バイヤーも大変そうだよ~。去年だったかなぁ?同期の金井くん、どっかの店で売れてるからって、うちにも仕入れたけど、読みが外れて大量の在庫かかえちゃってさ、大目玉くらってたよ~」 「それは金井がアホなだけ」 「アホって……」 相変わらず美奈は辛口だ。 「だってそうでしょうよ。安易に他店で売れてるからって。店のブランド力も客層も違うんだから、同じように売れるわけないじゃん」 「まぁ、それはそうだけどね」 流行はあるけれど、店舗によって客層が違ったりするので、どういう商品が好まれるかはまた違ってくる。 地域によって売上も様々だ。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加