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「そういえばあんた、金井に気に入られてたよね」
「あー。気に入られてたってゆーか…、あの頃金井くんに、ご飯奢るから相談に乗ってくれって言われてたんだよね」
その当時を思い出す。
あの時なんとなく、相談以外の目的が垣間見れて、金井を警戒してしまっていた。
「それ、たぶん違うわよ。相談目的じゃなくて、志桜里目当てだったと思うなぁ〜」
「……やっぱりそう思う?」
「あら、気づいてたの?」
「なんとなく……」
「で、ご飯行ったの?」
「行かないよ。変な期待持ってもらっても困るし…」
「金井は志桜里の中ではナシだったんだ?」
金井のヘラヘラした顔を思い浮かべる。
「ないな〜。そもそも、あの時篤志と別れたばっかで、そんな気になれなかったし」
「ああ、あの自己中で傲慢な男ね。あれは別れて正解」
篤志というのは元カレのことで、当時相当悩まされていて、美奈にはよく相談に乗ってもらっていた。
随分と心配かけたので、美奈は篤志を嫌っている。
「志桜里が別れたから、チャンスだと思ったんじゃない?」
「でも、金井くんてなんか頼りないんだよね…。あの時だって、私に在庫分をどうにかして売り捌けって丸投げしてきそうだったし。ミスは仕方ないとしても、そのあとのフォローとか…ご飯奢ることでチャラ、みたいに思ってそうで。ちょっと無責任って思えたし、仕事で尊敬できない人は、私の中ではナイかな」
「わ〜、笑顔の女神様、キビし~」
「なにそれ。また変な名前つけて……」
「私じゃないわよ。みんながそう言ってたの」
結局、あの時かかえ込んだ在庫は福袋に入れたりして売り捌いたけど、利益なんてなかった。
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