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でも、美奈のこの顔は、私に食いついて欲しいと思ってる顔で、さながら、えさを付けた釣り竿を目の前に垂らされているかのよう。
ここに食いつけば、よくない展開になりそうだ。
それならこれ以上この話を続けるのはやめにしよう。
だって、結局のところ、もう会わないのだから。
「別に…。話の流れで聞いただけで、気になってるわけではありません」
「ふうん。志桜里には合ってるような気がしたけどな~」
「やめてよ。だいたい、どこにいるかもわかんないんだし、今更そんな話しても仕方ないじゃん」
「ふむ。……ちなみに聞くんだけど、あの夜は彼の部屋にいたんだよね?」
この話は終わり、と終止符を打ったつもりだが、美奈は続ける。
あの日のことをまだ掘り下げてくるとは…
「まぁ、そうだけど」
「なら、家わかるんじゃん」
「家、て言っても、あの時は頭ぐちゃぐちゃの状態で帰ったから、最寄り駅しか覚えてないし」
あの朝、あの状態でよく帰れたものだ、と我ながら感心する。
「そもそも、セフレとか気持ちのない関係はイヤだって言ったじゃん」
「前も疑問だったんだけど、何をもってセフレだなんて言ってるの?」
「だって!……なんか慣れてそうだったし……体の相性良いって言ってて体目当てみたいな感じだったし……別に好きとか言われたわけでもないし……」
確信が持てなくなって、だんだん声が小さくなる。
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