回顧

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「あ!そうだ!もいっこ腹が立つこと思い出した!」 「うん?何?」 「あの日、キスマークつけられてたのよ。あり得ないでしょ?!」 「え、キスマークつけられたの?」 「う、うん」 そんな真剣に聞き返されると、なんだか恥ずかしい。 「ふぅ~ん……」 「イタズラが過ぎるでしょ!?」 「それってイタズラなのかなあ?」 「それ以外に何の意味があるのよ」 嫉妬心や独占欲といった意味以外なら、イタズラでつけたとしか思えない。 「普通に愛情表現じゃない?」 「え?」 「好きって気持ちが溢れて、強く吸い過ぎてついちゃった、とか。どうでもいいと思ってる相手にはつけないと思うけど」 「愛情…」 「だから私は、進藤さんは志桜里に対して少なからず愛情があったと思うけどな~」 「会ったばかりなのに?」 「会ったばかり……」 何やら考え込んでいる様子の美奈。 「美奈?どうかした?」 「ん?ああ、ごめん。でも、知り合った時間なんて関係なくない?一目惚れっていう言葉があるぐらいなんだから」 「一目惚れ…」 「愛情があったとしたら、許せる?」 考えてしまう。 彼は私に好意を持って、接してくれていたのだろうか。 改めてあの日のことを思い返してみる。 ちょっと意地悪なところもあったけど、本当に嫌だって言うことはされなかったし、触れる手は優しくて、気づかってくれてた。 優しく笑う顔だとか、甘く見つめられたこととか、私の意志を尊重して耐えようとしてたこととか…… 愛情を感じられるような場面もあったと気づく。 -愛情があったとしたら許せる?- 許せる…ような気がする。 でも、今更もう遅いよ。 彼だって逃げた私にいつまでもこだわってないだろうし。 私のことなんか、きっともう忘れてる。
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