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あの夜のこと【美奈 視点】
志桜里はかわいい。
フェミニンな感じの容姿はさることながら、ふんわりしてて柔らかい雰囲気があるのに、性格は見た目とは違ったりして、そのギャップもおもしろくて、私は好きなのだ。
志桜里とは同期入社なのだが、短大卒の志桜里と四大卒の私とでは歳が二つ違う。
仕事中は落ち着いていて、頼れるお姉さん的存在で、笑顔を絶やさず、スマートにお客様を案内する姿は、接客の鏡である。
その笑顔がとても自然でニセモノっぽくないのが尊敬するところ。
透明感があり、柔らかいその笑顔にやられる男性は数知れず。
しかし本人は自覚がないので、見ている側はおもしろい。
私は、他人から言わせれば綺麗系だそうだ。
でもどこか冷たい印象を相手に与えてしまい、近寄り難いのだとか。
愛想笑いを顔に貼り付けて仕事するのがイヤで、接客以外の業務を希望した。
販売促進部でイベントなどを企画するのは楽しくて満足している。
志桜里とは部署が違うため、社内で顔を合わせることは多くはない。
それでも時々は飲みに出かけた。
あの日も、終業後に突然飲みに行こうと誘われた。
電話の向こうの声が興奮したような感じだったので、何かあったな、と思った。
志桜里と飲みに行くと大抵グチがこぼれ出る。
静かな店だと声のトーンが気になるので、どうしても騒がしい大衆居酒屋を選んでしまう。
お洒落なバーで甘いカクテルを飲んでそうな志桜里だけど、顔に似合わずビールや焼酎が好きで、お洒落なつまみより砂肝や塩辛を好むのだ。
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